8冊目 喝采の白鳥

「1・2・3・4・5・6・7・8」


また同じステップで止まる。


「花!何度言えばわかるの?ここはもう少し前でしょう!」


今日はずっとこのパートで止まっている。かれこれ3時間ぐらいだろうか。


「すみません!」


時刻は夜11時、花はクタクタである。


「今日はここまで。」


そういうとコーチの村岡はレッスンルームを出ていった。


しかしここまで厳しく言うのが期待の表れであるのは確かなのだ。


花は1か月後世界大会に出場予定にもかかわらず、今回の大会は気分が乗らないままでいる。


幼稚園の時にバレエを始め、中学の頃に才能が開花してから国内外のタイトルを次から次へと獲得していった。


今年が高校最後という事もあり、気合を入れていたつもりだったのだが、いつの間にか空回りしてしまったのだ。


タオルで汗を拭きダウン用のストレッチを始める。


シューズを脱ぎ着替え終わるとレッスンルームを後にした。練習の最後は村岡と軽いミーティングをして解散するのがルーティンである。


「花、もう時間無いのわかってるでしょ。心の調子整えてきなさい。」


村岡は花の事情を知っているがために少し心苦しく感じたが、一流のアスリートとして育てるために心を鬼にした。






架空小説より引用・・・「喝采の白鳥」

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