3冊目 シャーレン戦記

「いいかい、あと1週間もすればパルパンタスのやつらが戦争を仕掛けてくる。そのためにいまから準備だよ。お前には気の毒だが、頑張っておくれよ。」


「メジィばあちゃん、お母さんは?お父さんは?」


「この戦いが終わればきっと会える。第一移民隊は順調だと軍人から聞いたよ。」


「うぅ・・・」


「ヒーナ、お前ならきっと両親に会える。もう少しの辛抱だ。」


「わかった。」


「いい子だ。さぁ、門の強化を手伝っておいで。」


そういうとヒーナは西門の方へ走っていった。


澄んだ空から吹き降ろす冷たい風は松明を一層燃え上がらせる。


白い月明かりに照らされながら、街は着々と攻撃を迎え撃つ準備に取り掛かっていた。


そのとき


「敵襲!敵襲!」


北の谷に面した門から叫び声が聞こえる。


その声を聞き傭兵も一般市民もざわつき始めた。


「ウォーーーーーーー!」


城壁の外からは勇ましい声が聞こえる。


「北だ、北だ!」


軍人は急いで武力の再配置を始めた。


「おい、ヒーナ!」


混乱の中でそう呼ぶのは道場の兄弟子マルシャである。


「兄ちゃん!僕、どうすれば・・・」


ヒーナには初めての奇襲で周りが見えなくなってしまった。


「あいつら、一番警戒の薄い北側から攻めてきたんだ。俺と来い!」


マルシャはヒーナの手を握り、城に向かって走り始めた。


「でも、メジィばあちゃんが。」


ふと先ほど別れたことを思い出した。






架空小説より引用・・・「シャーレン戦記」

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