4冊目 コスモス
「おはようございます。」
そのやさしい声は初老の男のものだった。
振り向くとそこには、坂の上で小さな喫茶店を営む廣田が立っている。
「あぁ、おはようございます。」
廣田だとわかるとチカは笑顔で挨拶を返した。
「おかげさまで妻の葬儀は無事に終わりましたよ。ありがとうございました。」
そういうと廣田は手にしていた紙袋を差し出した。
廣田が店を開けている間、チカは廣田の喫茶店で昼の2時間だけコーヒーのみを出す仕事をしていたのだ。
「そんな店番だなんて。私も楽しかったので、こちらこそありがとうございました。」
「その2時間がお客さんとのつながりを保ってくれるんです。」
廣田はチカに紙袋を渡すと、手持ちかばんをあさり始めた。
「これもどうぞ」
手には絵葉書を持っている。
「あ、覚えてくれてたんですね。ありがとうございます。」
チカは絵葉書の収集が趣味で、旅行へ行く度にその土地土地で絵葉書を買い漁るのだ。
絵葉書を渡すと、廣田は軽く会釈をして坂の上に戻っていった。
架空小説より引用・・・「コスモス」
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