これからも続く毎日

「じゃあ……迷宮生還を祝してー!」


 乾杯、と三人の姦しい声が酒場に響き渡る。

 それに便乗して周りにいる客もはしゃぐように乾杯を重ねた。

 夜間にこれだけ繁盛している酒場で、この三人のことを知らないものはいない。

 つい最近まで男子三人であったものたちが、女子三人となったことを。


「いやあ、よかったよかった。これで借金は返済! お酒もパカパカ飲んでもお咎めなし! 最高だねえ!」

「本当によかったよ、無事に返済できて」

「まあ、原因を作ったのはお前ら二人だけどな」


 あの熱中した三人の交じり合いは、延滞料金という形で、多額の借金として三人に降りかかることになった。ひいこら言いながら迷宮に潜りに潜り、そして、今日ようやく返済ができたようであった。

 今まさしく、返済を終えた記念の祝杯を飲み盛り上がっている。

 ただ返済記念と大声でいうわけにはいかないので、迷宮生還と誤魔化してはいる。


「はあ……女の体になって、ちょうど今日で半年だぜ?」

「もうそんなに女の子になっちゃってたのか……」

「なんていうか、さ。前からそうだった気がするんだけど、気のせい?」

「気のせい」

「気のせいだね」

「さいですか……」


 各々は適度に食事をつまみながらガンガンと飲み続けている。

 というのも今三人が飲んでいるお酒は、軽くて安い、味わいもいい、この店で有名な『女殺し』のものであった。

 三人は、そのことを知らずにじゃんじゃん頼む。

 ふとウェイターが部屋をとることを勧めてきたので、気分がよくなっていた三人は一部屋キングサイズを頼んだ。三泊四日で。

 そうして、飲み飲み続けた三人は、酔いも極まり、じゃあ部屋で寝るか、と仲良く向かい、部屋で寝た。

 また三人で寝てしまったのである。


 結果としては。

 今回はギリギリ、セーフであったようで。

 借金が戻ってくることはなかった、らしい。

 こうして、三人の物語は続いていく。

 体が変わろうとも、心が変わろうとも。

 仲良く、そして、淫らに。


 今日も三人は生きていく。




【終】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生したら大変だし、親友たちと一緒にTSするし、告白されるし、襲われた異世界生活 雨のモノカキ @afureteiru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ