第8話 ギルドマスターと私



「こら、フィロ……貴方また酷い事を、しましたね」


「ごめんなさい、その悪気があった訳ではないんですが……つい、その……制御、出来なくて」


「それは何回も聞きました、また制御が出来なかった、ですか……。これでは、お話になりませんよ。ですが、不幸中の幸いなのかは、わかりませんが。あの後から魔族たちの動きが、治まったので……。いつもよりかは、厳しくは罰しませんが、少しの間、減給にさせていただくので。この件に対して、反省するように……。話はこれで、以上です」


 そうこのギルドのマスターである、スカッチは事務的な口調で。AIのように、心がここにはないような声で、フィロに言い放つので……。


 それを聞いたフィロは、しょんぼりと落ち込んだ表情を見せて。


「この度は、大変失礼しました。この件は深く、反省し……今後ないように、勤めますので」と頭を下げてから、ギルドマスターの執務室を後にして……。


 とぼとぼと落ち込んだ歩みで、廊下の奥を進みながら……。


 ふと、立ち止まって。

 こう静かに、呟く……。


「ほんと、気をつけないとな。特に、アジュトと一緒に居る時は……さらに気をつけないと。だって、彼女と一緒に居ると、いつもより、本当の私っぽくなっちゃうから……。ほんとダメだよね」と、そう小さく言ってから、さらに続けて。


「私は……人間なんだから、こんな魔族みたいな力は封印するべきだよね……。でも、この力を持っているからこそ、みんなを助ける事が出来るから……やっぱり」と、自問自答してから。


 廊下から見える、雲一つない青空を。


 ──唯々もの悲しげに、静かに見つめるのだった。


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