第4話

「みなさん大丈夫ですか!? 早くこの施設から逃げて!! じゃないと魔物に襲われちゃう!!」


フィロはそう言いながら、施設の内部を走り抜けて。


 この騒動にまだ気づいていない人々に、優しく語りかけると。


「……魔物に襲われる? それは、どういう事? 魔物なら……」


 そう施設で働く職員だと思われる人物は、不思議そうな表情を見せて答えるので。


フィロは(こいつ、こんな緊急事態なのに……なんで、こんな風なのよ。襲われて殺されるかもしれないのに!!)と内心で暴言を吐きながらも。


 穏やかで落ち着いた笑顔と声音で、相手をパニックにさせないように……。


「良いから、こっちに来てください。他の方達もみんなここから離れていますからね」


「……そうか。分かった、誘導感謝する」

「はい、ではあちらへ……」


 職員だと思われる人物を後ろに引き連れて、フィロは施設の出口にまで向かいながらも、道中に居る小言を毎回言ってくるこの施設の職員全員に声をかけて、施設から離れた場所に彼らを避難させ終えたと同時に。


 どーんと勢いよく爆発する音が、聞こえ始めたので……。


『これはいけない』と思ったフィロは、避難した人物達を振り返る事もせずに施設へと一人で戻って行けば。


「おい、誰か居ないのか? くっそ……人間共め、こういう時だけ恥も知らないで逃げやがって」という人ではない生きもの達のーーいや、違う魔族達の声が施設の奥深くから聞こえてくるので……。

「えっ……もうこれ程多くの魔族さん達がきたの? 嘘でしょ? 流石に早すぎる……ありえないよ、こんなの」と目を点にしながら、彼女は呟きつつも。


 この声の主達を見つけようとして、かすかに聞こえる声を頼りにして。


 施設の廊下を、人間では無理な速度で。


 一陣の風のように、走って行けば……。

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