第2話
「ひゃぁああっー!! 悪魔!? こんなタイミングで、いきなり来るなんて、ど、どうしよう……いや、どうすれば良いの?」
フィロはあわあわと慌てふためいて、アジュラトに抱きかかえられていた体勢から猫のように、ヒョいと抜け出して。
上空を飛んでいる悪魔である、黒髪ロングの目のやり場に困るぐらい胸元を開けた、赤いドレスを着た女悪魔をじっと見つめれば。
「……逃げなくても、良かったのに」と、
アジュラトは『抱きしめていた大切なものに逃げられて、深く絶望する人』のような声を出して。
──自分達の楽しい時間を引き裂いた元凶は、お前か?? お前なんだな? という、怒りと殺意が入り乱れる視線で、女悪魔を睨みつければ。
あまりの喧騒に相手はたじろくので、アジュラトはフィロを庇うような護りの体勢をしながら、声だけは優しく。
「フィロ、ここは私が対処するから……君は、この施設にいる人間達にこの事を伝えてきて? もちろん、君ならすぐに出来るよね」
「アジュ……わかった、みんなに知らせてくるよ。でも、アジュ一人で本当に大丈夫?」
「心配しなくても大丈夫だよ、こんな相手に負けるほどじゃないし……。それに、私が唯一負けるとしたらフィロたん……じゃなくて、緑眼の魔物だけだから」
「それなら、良いけど……。でも怪我はしないでね? あと魔族も殺したら駄目だよ! そんな事したらもっと世界が不幸になっちゃうよ」
そう綺麗事を言いながら、フィロはブラッド地区にあるこの科学国家ロベリアの、多くの電力を担う発電所の方へ走り出すので。
アジュラトはそれに、ニコニコと笑みを浮かべて。
「ほんと……心配しなくて良いよ。だって、魔族が魔族を殺す事なんて……まずないし。あったとしても、人間に仲間を売った裏切り者を、消す時だけなんだから」
『ねぇ? そうだよね?』と静かに淡々と言い放ちながら、上空に居る悪魔を手招いて。
「イムお前!! 何だよ、その格好は……そんなに胸を見せて? 私のフィロを誘惑するつもりか? そうなんだよな!? そうに決まってる。だって……フィロは見た目可愛いし、言動も何にも知らなくて騙されてるから……凄く可愛いくて、虐めたくなるから……きっとお前も」と、
アジュラトは息継ぎもせずに、相手を喋らせない勢いで一方的に捲し立てるので。
呼ばれた女悪魔は顔を真っ青にしながら、大きな声でそれを否定する為に。
「違います!! 魔王アジュラト様、そんな事など。1ミリも考えてなんかいませんわ!! むしろ、誘惑するなら貴女様です……。何故なら貴女様は我ら魔族にとって、最も尊ぶべき存在なんですもの」
女悪魔は歓喜の声をあげて、そう絶対なる主人に首を垂れるので……。
アジュラトは、その光景をじっと疑り深く見ながら、愛想笑いを浮かべて。
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