サボり魔娘の一日

崎将とおる

第1話

 排気ガスがもくもくと立ち込める街の大通りを抜けて、黒髪を愛らしくツインテールにした人の身であれば、かなり珍しい最高魔族の証でもある緑の瞳を持つ。

 黒のスーツにミニスカートを合わせたフィロは、自分のペースを絶対に変えないと言わんばかりに。


 とことこと子供のようにはしゃぎつつも、ゆったりと急がずに歩くので。


 そんな彼女のすぐ隣で、可愛いものを慈しむかのような表情でありながらも……。


フィロをせかせかと歩かせたくて、うずうずしている。

光に反射して輝く金色の髪を紫のリボンで一つに縛った。


 どちらかといえば、可愛い系ではなくカッコいい系の美人であり、

片目で青と緑の瞳を持つアジュラトは、黒のパンツスタイルのスーツを活かして。


 ━━フィロを抱き抱えて、目的地まで走って行こうかとそう考えると…。


 そんな思いに反して、フィロは。


「今日の仕事は……サボろうよ? 魔族と戦うのってさ……めんどくさいし、可哀想だよ」と、嫌そうにアジュラとの思いに答えるように、彼女は答えるので。


「確かに、可哀想だと思う……。本当に私もそう思うよ、だけどフィロ。そんな可哀想な魔族達が、私たちではないギルドのメンバーにあったらどうなると思う? 間違いなく、血まみれの殺しあいさ……。だからこそ私達は、誰よりも早くに行かねばならないのさ」


「……嗚呼、そうだった。 私が行かなくちゃ、普通の人たち凄いことになるし、魔族達も大暴れしてさらに、誤解を生んじゃう!! そんな事させたくない……」


 フィロは力強くアジュラトにそう言い返すので、その言葉を聞いたアジュラトは。

言葉への返答をするかのように、フィロをお姫様のように抱き抱えて。


 ━━人では出せないであろうスピードで、街の南下にあるこの国を支えるライフラインがあるブラッド地区へと走り出すので。


「わぁあああああ!! 待ってー!? は、速すぎるから!!」


「えっ!? 速すぎる? そうかな……? これぐらいのスピードなんか遅いぐらいだよ」


「はぁっ…えっ…アジュったら、またそんな冗談言って。 こんなの人が出せれるスピードじゃないよ!? まるで、風に吹かれてるか、飛んでいるみたいじゃん」


「……そうかもね。なんて、冗談言って欲しい? それとも……」


 アジュラトはケラケラと楽しげに最初は笑って言っていたが、途中で一気にテンションが急降下するかのように、感情が全く見えない声で低く答えるので。


 フィロは突然の変化に、目を大きくして驚き。

彼女の後ろをじっと見ると、なんとそこには……。


 背中からコウモリのような羽が生えた、人のように見えて人ではない別の生き物が居て……。



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