第7話

 強面の男性は大型の回転式拳銃を取り出しジンさんに銃口を向けた。

「つけを払ってもらうよ」

 男はドスの利いた声で唸った。僕は密かにテーブルの下でスマホをいじり警察に通報しようと試みた。


「小野さん、大丈夫です。銃を向けられることには慣れてるんです」

 通報するなということか。飛騨乃ジンさんはヤバい筋に借金があったのかと一人合点した。


「小野さんって、仲間か」

 拳銃を持った相手に問い質されては仕方がない。


「僕は、いえ私は釈有留市役所税務課職員小野タカヒロと申します」

「なら堅気中のカタギだな。小野さん、こいつは悪い奴で税金を滞納してやがるんですよ」


「......住民税も滞納されてますね」

「信じなくてもいいが、人間の魂の売買で得た利益をこいつは天国に申告しなかった。ところが天網恢恢疎にして漏らさずって奴でね。徴税権が日本に回って来たんだ」


「あなたは国税局の方ですか?」

「国税局地域外課ってのがあってな」

「質問します。魂の売買と言いますと」


「ルシファーは日本人になりすまし、地方都市の喫茶店店主として人生を送っているがその前にロンドンで魂の売買をやっていたんだ」

「税額は」


 ジンさんが口を開いた。

「青森のリンゴ2個分なら払った」

 強面の男性は首を横に振った。

「申告漏れがあった。追徴課税であと2個分。意味分かるよな」

「今日はもう店を閉める。帰ってくれ」

 途端に銃声。鳩時計が弾けとんだ。

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