第4話
見てはいけない生々しさ。慌てて目を逸らす。
「ソフトクリームも食べ終わったようだし、御両親も心配するんじゃないかなあ」
教科書的な建前が口から漏れ出た。
「今帰っても一人きりなの」
アヤミから目を逸らしたまま天井の蛍光灯を見上げた。ジッパーが降りる音。ジーンズを脱ぐ気か。
「事案になるから駄目。僕失業しちゃうから」
長い沈黙。ジッパーが再び上がる音。
「帰る」
憮然とした面持ちでアヤミはドアに向かい、そのまま激突して仰向けに転んだ。
「大丈夫?アヤミちゃんドア通り抜けて入って来たよね」
「出れない。おかしいなあ」
頭をさすりながら上体を起こす少女。
「よく分からないけど、今日は普通に開いたドアから出たら?」
「うん......」
不可解そうに首をひねりながらアヤミは立ち上がり、僕が開けたドアからスニーカーを履いて表に向かった、と思ったら振り向いた。
「なんで実家に住まないの?」
「形だけでも自立したいから」
「大人だね」感心した面持ちのアヤミは普通に歩いて闇の中に消えて行った。
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