第2話

「誰だったかな」

「昼間、うちに来たじゃないですか」

 一瞬考えたが分かった。

「飛騨乃さんの娘?」

「うん、アヤミ。覚えてないんですか?」


 返事をする前にレジのおじさんから苦情が出た。

「後ろに他のお客さんがいるので、場所を移してお喋りしてもらえますか」


 仕方なく会計を済ませて店外に。アヤミはあっさりアパートの部屋の前まで付いてきたが僕は彼女に告げた。


「10歳違いの未成年の女の子と2人きりになるわけにはいかないんだよ」

「あたしは別に気にしなーい」


 アヤミは鉄製のドアを、僕の目の前で通り抜けて中に入った。

 茫然とする僕を彼女が部屋の中から呼んだ。

「小野さん、アイス嫌い?」


 アイスが好きとか嫌いとかいう次元の話ではない。僕は落ち着いて鍵を取り出しドアを開けた。

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