第24話 食べ物の恨みは恐ろしい

訓練を終えた快兄と共に家に帰り、あらかたの家事を終えたお風呂あがりの私に衝撃の事態が待っていた。


冷蔵庫に保管していたプリンが無くなっている!


快兄と雪ちゃんの関係に頭を悩ませる私にとって一日の癒しであるプリンが姿を消してしまっているのだ!


晩御飯の準備をしている時には気づかなったけれど、ママが出勤前に食べていってしまったのだろうか?


その可能性も無くはないけど、やはり一番濃厚な犯人は快兄だ。


許されない。快兄には力の事で迷惑をかけているとは思うけれど、もし犯人が快兄なのだとしたら、これは許されない。


私は全力で階段を駆け上がり快兄の扉を開けると、そこには、私の大事な、大事なプリンちゃんを美味しそうに口に運ぶ快兄の姿が!


「快兄!!それ私のプリンでしょ!?」


えっ!?と快兄は驚いたように私に振り返る。


そして私のプリンをこっそり食べていた事がバレてしまった事を申し訳無さそうにしながら口を開いた。


「あー、すまん。秋晴なのは分かっていたけど、訓練で疲れちゃってどうしても甘いものが食べたくなっちゃってさぁ。」


「分かる!分かるけど、それは私だって同じ!」


どれだけ言っても、おさまらない快兄の雪ちゃんとの触れ合いに、それに比例するように増していく雪ちゃんの快兄への依存。


家に帰っても、雪ちゃんの監視がある事でリラックスなんて出来やしない。


私にとってスイーツは日々の苛立ちを慰める唯一の存在なの!


「あー、そんなにこれ楽しみにしてた?ごめんなぁ。変わりにまた買っておくよ。」


と顔の前で両手を合わせて謝る快兄。


なんだそれは!?


「はぁ!?それは普通のプリンと違うの!一日五十個限定のとろふわプリンだよ!?訓練で自分で買いに行けないから、友達に頼んで買ってもらったんだよ、!?それに、またっていつよ!?私は今スイーツが食べたいの!!」


日々の苛立ちもあり、私は普段出さないような大声で快兄に詰め寄った。


余り見せない私の態度に、よっぽど怒っていると感じたのか、快兄は先程までのなぁなぁとした謝罪ではなく、私に向かってちゃんと頭を下げ謝る。


「ごめん、秋晴。このプリンがそんな特別な物だと思っていなかったんだ。一日五十個のこれと同じ物は無理だけど、今から何かスイーツ買って来るよ。」


正直私の怒りはまだ収まりきっていないけれど、快兄は真剣に謝ってくれている。


快兄が疲れているのも元を辿れば私のせいだ。


代わりのスイーツを買ってくれるならまぁ、許してあげても良いかもしれない。


「本当に悪いと思ってる?」


「あぁ。」


「次からは勝手に食べたりしない?」


「あぁ、どうしても食べたくなったらちゃんと秋晴に言ってからにする。」


「・・・分かった。今回はそれでゆるす。」


「ありがとう、秋晴。それじゃあ、早速何か買ってくるよ。」


と快兄は私の頭を撫でで家を出ようとするが私はその快兄の服の上袖をギュッと掴んだ。


「・・・何買ってくるの?」


そんな私の問いに快兄は頭に疑問符を乗せたような顔をする。


「えーっと、何ってそりゃプリンだけど。」


「どこのやつ?」


「まぁ、この時間やってる所はあんまりないし、コンビニになっちゃうと思うけどダメか?」


「コンビニのスイーツならプリンともう一個。」


快兄はまた、私の頭に手を乗せグリグリと撫でると、


「分かったよ。チーズケーキでいいか?」


と少し笑いながら言った。


「うん。レアチーズのやつね。」


わたしの返答を聞くと快兄は了解、と一言だけ残してコンビニへと向かった。



快兄がコンビニへ向かってから三十分。家からは往復十五分程度掛かるので、何だか少し帰りが遅いなと思う程度。


それからさらに十五分。少しだけ不安になった私は快兄に連絡を入れるも繋がらない。


でもその時もマンガ雑誌の立ち読みでもしているんだろと深くは気にしなかった。


そして快兄が家から出て一時間。幾ら何でも遅すぎると、快兄の携帯にもう一度連絡をするが繋がらない。


快兄はそのまま二時間経っても家には帰って来なかった。

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