第14話

Cap013


「お帰りなさい。博士!」

 アトムは、そう言うと博士に歩み寄った。

こう見ると、アトムは本当にごく普通の小さな子供で、まさか、この子がロボットだなんて思えないのである。

「おぉ、アトム。ただいま、ただいま」

「どうでした?」

「うむ、学長には事情を話した」

「で?」

「まぁ、ワシと学長の間柄だから、特にお咎めはないが…食堂には行けん」

「は?何で食堂が出てくるんです?」

「毒くらいは盛ってくるやもしれんからな」

 “お咎めは無く”とも、“命は狙ってくる”。そんな間柄である。


 まぁ、しかし。命を狙われるも仕方ないわけで…。

 放射能漏れが発覚し、大学は全敷地立ち入り禁止。

急に“実は、原子力搭載のロボットから放射能が漏れた”など公表できるわけも無く、建物の下のガス管が割れて、ガスが漏れてるので、修理が完了するまで、当面、大学は休み。GW中の休みは延長という事となった。


「まぁ、そんな無理がよく通りましたね」

「無理もクソも、そのおかげで、こっちは本当に穴掘って、ガス管、ぶち抜いてきたんじゃぞ!」

「…何も本当にしなくても」

「マスコミ対策じゃわい!しょうもない学長命令、出しおって!」


“嘘は、直ぐに暴かれる。ならば、真実にしてしまえばいい”

後に、学長が自費出版した自叙伝の一節になる言葉である。


そこらへんが、“学長も博士の仲間なんだな”と思ってしまう。

「アトムの人工皮膚は?」

「あぁ、ウチの機械工学部の博士が、どうにかすると」

「よくやってくれましたね」

「代わりに、アトムの事をじっくり調べさせてくれって」

「科学的好奇心には勝てんというわけですね」


「あんまり他人に触られたくなんじゃが、致し方ない」

「でも、本当に、よく作りましたよね。博士の専門外でしょうに」

「そりゃ、情熱と才能の賜物じゃ!材料さへ調達できれば、どうとでもなる」

「材料ですか。で、どこから原子力なんて手に入れたんです」

「コネでコネコネ、ショーン・コネリー」

「…意味が分かりませんが」

「ちょうど、米軍の潜水艦が停泊しとってな、コネで米軍基地に入らせてもろたんじゃ」

「それって、原子力潜水艦ですか?」

「うむ。意外に潜水艦から切り離すのが…」

「いい。聞きたくない」

「小型化が問題じゃったんだが…」

「聞きたくないと言っておるだろうが!」

「お前が聞いてきたんだろうが!」

「盗んでんでしょうが!」

「借用しただけじゃい!」


 このままでは、僕はCIAか何かに暗殺されかねない。

この博士の片棒を担ぐのは、ごめんである。


「早く、返してきなさい!」

「そんな簡単に返せるか。それに、返したらアトムが止まってしまうじゃないか。のぅ、アトム。さぁ、飛行訓練再開じゃ!」

「はい、博士!」


 足のジェットが火をあげる。

それと同時に大学は、漏れたガスが引火して大爆発を起こした。

 

 もちろん、明日の朝刊は“大学、ガス引火で大爆発”なわけである。

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