第15話
Cap014
“本当のガス爆発”で大学はというと、狭い敷地に無理矢理に建増しした校舎のせいもあって、その大半は瓦礫の山となっていた。これで死者も怪我人も出なかったのは奇跡でしかない。
いや、約1名。怪我人は発生した。
博士に放射能漏れ騒動の責任を取らせ、“嘘の出来事の正当化“を命じた学長は、その正当化の出来具合を確かめに穴の中を覗いている真っ最中であった。
爆破後の記者会見に映る学長は、全身包帯に車椅子姿。
点滴スタンドと看護婦を横に連れテレビで観ていても、“いたたまれない“以外の言葉が見つからない姿だった。
それを一緒に観る博士はというと、そのマブダチの姿を腹を抱え笑い転げていた。
まさに“悪“である。
現場検証が終了した。
調査官も、ガス爆発と聞いて来ているので、まさか、そこが放射能汚染されているとも思わなかったか。特に、その手の調査はなされなかった。また、大学から離れ小島状態の、この研究室にも気がつかぬまま、現場検証は終了した。
そして、その翌日から新しい校舎を建て直しが始まったのだが、それは簡単な話でない。先ずは、その瓦礫を除けないといけないからである。
膨大な瓦礫の山は、まるで古墳群のように点在し、また、その一つ一つが巨大で更地に戻すのも、ひと苦労である。
しかし、GWが延びて遊び回る学生達を野放しにしているわけにもいけない。その学生の親達が納める学費が、諸に再建費用なのだから、休校が続き学費を取りっぱぐれるという事態は避けなければいけないのである。
そこで学長がとった対処方が、“僕の施工管理地域”でのプレハブの校舎建設である。僕の“努力の結晶”にプレハブ校舎を並べ、工事の間の仮校舎にする計画だ。
「プレハブ校舎、建設反対〜!お茶ノ水ゼミの管理区から出て行け〜!」
「あっ、トビオさ〜ん」
向こうからアトムが博士と歩いてくる。相変わらず、僕はアトムの中で『トビオ』である。
「まだ、やっとったんか。お前もしつこいの〜」
アトムの放射能漏れを機械工学部の博士に直してもらい帰ってきた博士は、“我が土地を守ろう“とハンガーストライキに入った僕に、コンビニの袋を差し出した。そこには、お茶とコンビニおにぎりが入っている。
「せっかくの差し入れですが、結構。ハンガーストライキ中ですので。それよりも博士も早く加わってくださいよ」
「何でワシまで、そんな無意味な事をせにゃならんのだ」
そう言いながら、博士は拒まれたコンビニ袋から、おにぎりを出し、モグモグと頬張った。
「ここで何か育てて、それを収穫して資金にするって言ったの博士じゃないですか。このままじゃ、それも出来なくなっちゃうんですよ!こっちの承諾もなく無断でプレハブ校舎だなんて、無茶でしょう」
「仕方なかろう。何か他の手を考えるわい。それに無断ではないぞ」
「えっ?」
「今回の件。この土地の没収で学長と手を打ったからな。邪魔をするなぁ。退学処分になってもワシは知らんぞ」
そう言い残し、小屋に戻る博士とアトム。
そして、僕はまた、この広大な土地の真ん中でプラカード片手に立ち尽くすのである。
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