第4話
「じゃあ、あらためまして!自己紹介といきますか!」
誤解も解けて、柔らかな空気の戻った「元・生徒会室」。
部屋の端の方にのけてあった椅子を引っ張り出してきて、円状に並べたところにみんなで丸く座っている。
文月先輩は、写真を中等部会長に届けに行ってくれたからいないんだけど。
ホントは私の仕事だったのに、「おまえ疲れてるだろ。先輩たちには伝えとくから、ここのゆっくりした雰囲気に触れてリラックスしとけ」って言ってくれたから、先輩の優しいお言葉に甘えさせてもらったの。
といってもここにいるのも迷惑だろうし、外出て散歩でもしとこうかな、なんて思ってたらなにやら文月先輩に耳打ちされた、ももは先輩がキラーンと目を輝かせてこっちに来て、捕まったが最後、ももは先輩のゴリ押しによりなぜか自己紹介をしていくことになり、ました……
まぁでも個性豊かな先輩方とかに好奇心が湧かないこともなく、いやぶっちゃけ、かなり気になってたことでもあり、のせられるがままに椅子に座っています。
「じゃーはい。私から行くねー」
手をあげて、ももは先輩がたちあがる。
「
「よろしくお願いします……」
いい人オーラがあふれ出てる。やっぱり明るい先輩だなあ。
…だけどさっきからニヤニヤしながらこっちを見つめてきてると思うのは…自意識過剰?
「次ー、くゆき!」
くゆき、って……私がお腹に第二関節ぶちこんじゃった先輩か…
ちらっと先輩を見ると、先輩は顔をしかめ、やれやれとでもいうように立ち上がるところだった。
まっすぐこちらを品定めするような瞳で見つめられて、私の体はカチッと固まる。
目つきが悪い訳じゃないんだけど、なんだろ、深いものをもっているというか、この人を本気で怒らせちゃダメなんだなって感じの瞳。
……神様、私、この数十秒間無事にいられますか…?
と、その時。
バシッ
「い゛っ」
「いつまで威嚇してるわけー。可愛い後輩怖がらせないでよねー?」
……ももは先輩がくゆき先輩の背中をぶったたきました。
ええ、もう、文字の通りにぶったたいてました。
くゆき先輩はこいつ、とももは先輩を軽くにらんで、改めてこっちを向く。
でもその瞳の色はさっきより明るくなっていることを、私は見逃さなかった。
「えー、
ももは先輩がまったくそっけないんだから、とぶつぶつ言ってる。
でも、わからないことあったら聞いてって言ってた。
くゆき先輩、根は優しい先輩なんじゃ…
「もー、ゆっきー恥ずかしがりやなんだからー。感情は相手に伝えるためのもの!もっと素直になろうよー」
「いや朝原それな?お前いつもまとめキャラなくせにこういう時だけ不器用になるのやめろよー」
「お前らうるさい」
片耳イヤホンしてたふわふわ系の女子の先輩と、校則違反の模範解答児がニヤニヤしてくゆき先輩を見てる。
へー、そういう感じの先輩なんだ。さっき見た限りだと、くゆき先輩はももは先輩のこと、その、す、好きなんじゃないかなって思うんだけど……
っていけない。人間観察のくせが出てきちゃってる。私、考えすぎ?
「はいはい、三人とも口喧嘩はそこまで。次、花怜いっちゃおー!」
元気なももは先輩の声ではーいっと元気よく立ち上がったふわふわ系先輩に視線が集まった。
にこっと笑いかけてくれて、なんだか私には薄いピンクのオーラが見える気がした。
「
かれん先輩……可愛い先輩。なんだけど漫画にでてくるような、あざとくて裏が怖い感じじゃなくて、言葉の隅々にどことなく裏表ない感じがあるなぁ。
それにしても推し、かぁー。縁のない世界だ。
「ちなみに花怜が二年の副部長だよー!」
ももは先輩の補足にえへへっとはにかむ、かれん先輩。
……ちょっと、きゅんときてしまった。
「最後ー!晶紀!」
「りょー」
かるーい感じの返事で立ち上がったのは、でた!校則、あーもうめんどくさい、以下略の人間!
ちょっと警戒心高めで校則以下略先輩を見上げる。
「
お、おぉ、やっぱかなり軽い先輩なんだろうか。
でも、頭があまりよろしくなさそうなしゃべり方をする割には、目をちゃんと見て話す人だ。
それにただ語尾を伸ばしがちなだけで、脱力はしてそうだけど割と……しっかりしてそうな気がするんだよなぁ。根拠はゼロだけど。
これで、全員……
なんだかやっぱり個性が強い先輩方だけど、そう、いっちゃえば……おもしろそう。
それぞれ、何か隠してそうなことがあって、気になっちゃうなぁ。
これからも、機会があったらお話ししてみたい。
そうそう、くゆりって人のこととか、そもそもぬい部が…何かとか?
聞いてみたいなあ…
「ということで!かほちゃん!これからよろしくね!!」
「はい!!」
……ん?
ちょっぴり浮ついた気持ちのまま返事しちゃったけど。
私はなにをよろしくされるんだい……?
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