第133話 神殿内部②
「エルキュール様、揃いました」
残りの王国軍も全て神殿に侵入すると、騎士オリヴァーがエルキュールへ報告に来た。
「揃ったね。じゃあこのまま進んで、マリーや大主教を探そうか。エイブラムももちろん対象だよ」
「承知しました。――――全員進軍! そのままエルキュール様一行に続けっ!!」
オリヴァーは振り返ると、王国軍へ指揮した。
「さすが精鋭ぞろい。訓練が行き届いている感じだ。じゃあ皆、警戒しながら進むよ」
エルキュールが歩き出したので、俺とメイベルがすぐに横へ付いた。
神殿内には太陽の光は届いてないが、隅々まで明るくなっている。
当然電気があるわけでもなく、たいまつも見当たらない。何か魔法具によるものだと思うが、今までこの世界に来てから見てきたものとは違う気がした。
壁や柱は、神殿っぽく絵や模様が隙間なく刻まれていて、入口に建っていたものと似た石像をところどころに見かける。
家具はなく全て石造りで、宮殿とはまた違った豪華さを感じとることができた。
「待てっ! 囲まれてるぞ!」
進みだしてから少し経った頃、メイベルが立ち止まった。
そんなはずはない。さきほど地図を見て、近辺に誰もいないことを確認済みだ。
俺は慌てて地図を再確認すると、多数の青い点がこの空間内に増えていることに驚いた。しかも地図を見ている間にも、みるみる増えていっている。
「なるほど、転送してきてるみたいだね」
エルキュールが状況を理解したようだ。
現れたのは武器を持った神官たち。
とても友好的な雰囲気とは言えず、今にも襲ってきそうだ。
「わしはシェミンガム王国の国王! 誰に向かって武器を構えておる! 武器を捨てよ!!」
シェミンガム国王が前へ進み出て、神官たちを一喝した。
しかし神官たちの様子に変化はなく、武器を収めることはなかった。
「彼らに王国の権威は通じないようだね。国王、下がっておいた方が良さそうですよ」
「ソルズ教。これほど危険な存在とは思ってもみなかった。王国として考えを変える必要があるようだ。エルキュール殿、役に立てず申し訳ない」
シェミンガム国王はエルキュールにそう言うと、下がって護衛の者たちに囲まれた。
神官たちの数はこちらの十倍以上。今はあまりレベルは高くないが、アラン達との戦闘を考えると――――。
「ゲオ! やっぱりヤツらやるようだぜ!!」
メイベルがあからさまに不快な表情を見せた。
辺り一面からあの黒い嫌悪感が広まっている。神官たちが禁呪を使い始めたのだ。
「エルキュールさん! 全員レベル40近くまで上がっているので気をつけてください!」
「彼らが禁呪を使いだしたってことだね。ジャスティン! マテウス! 聞いた通りだ! キミたちでも手こずるだろうけど、時間が経てば戦闘不能になるはず。防戦に徹するように! アラン君とヴィンス君は前に出ないようにね!!」
「ああ、任せろ!」
「承知しております!」
「おうっす!」
「はい!!」
エルキュール達五人とも武器を抜いた。
「両王国軍よ! 話のあった通り相手は禁呪によりレベル40ほどまで上昇しているようだ! 見た目に騙され油断しないよう心せよ! 王国騎士、王国戦士の力を見せるのだ!!」
指揮をとる騎士オリヴァーが、剣を掲げ全軍を鼓舞した。
「おおぉぉぉっ!!!」
王国軍の応える声が開戦の合図となり、大勢の神官たちが飛び掛かってきた。
「来るぞぉー!」
「数に怯むな!」
「王たちをお守りするのだぁ!」
突然の近距離戦のため、すぐに大混戦になった。
「魔法は巻き込むから魔導士は一旦下がれ!」
「回り込まれないようそれぞれ連携するのだ!」
「禁呪が切れるまでの勝負だぞ!」
さすが選び抜かれた王国の騎士や戦士。
そんな中でも整然と戦っている。
神官たちの能力値が高いとはいえ、戦闘経験も少なく禁呪で無理矢理にレベルを上げただけ。
個々の強さは歴戦の猛者に及ばないようだった。
それでも数の差は圧倒的。こちらは相手を殺さないよう戦っていることもあり、全体的に見れば劣勢が続いていた。
「クソッ! こいつら弱そうなくせにパワーとスピードが高くてやりづれえぜ!」
「ジャスティンよ! お前は弱いんだから私の後ろに隠れていても誰も責めはせぬぞ?」
「うるせえぞ、マテウス! てめえだって防ぎきれてねえじゃねえか!」
ジャスティンとマテウスは無駄口をたたく余裕はあるようだが、相手をしている数が三十人以上はいる。
HPが少しずつ減っているところを見ると、さすがに攻撃をくらっているようだ。
ただ、エルキュールだけは別格だった。
今までと同様、華麗に攻撃を受け流し、大勢の神官を一人で受け持っている。
これほどの人数差で何とか均衡を保っているのは、間違いなく彼の存在が大きいだろう。
それでも全体的な戦況を見ると、ジリジリと押し込まれているのが分かった。
時間が経てば経つほど参戦してくる神官が増え、数的不利はさらに広がっていっているのだ。
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