第9話 出会い
俺は悲鳴の主を探した。
よく見ると、マンティコアが追いかけている先に、女性の姿があった。
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名前 ディーナ
レベル 7
種族 ハーフ獣人
HP 39/87
MP 60/60
攻撃力 35
防御力 19
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ハーフ獣人?
獣人と人間のハーフってことか。
たしかに猫か犬のような耳が頭の上にあり、尻尾も付いているが、それ以外はほぼ人間のような姿をしている。
助けないと!
俺は茂みから飛び出した。
彼女は足を怪我して、走れないでいるようだった。
「た、たすけて……」
彼女は俺の姿を見ると、泣きながら声を絞り出した。
可哀想に、よほど怖い目にあったのだろう。
俺はマンティコアの前に立ち塞がり、両手を広げた。
攻撃をするわけにはいかない。ただ攻撃を受けるだけにしてみた。
マンティコアは俺に気づくと、前脚で攻撃をしてくる。
その勢いで、俺の巨体はなんなく飛ばされ、近くの岩に衝突した。
この大きな身体を簡単に飛ばすなんて、さすがに力があるようだ。
と言っても、まったく痛くないし、受けたダメージはゼロだけど。
今の間に、彼女はマンティコアとの距離を少しとれたようだが、マンティコアは再度彼女に向かおうとしている。
俺はすぐに立ち上がると、マンティコアの前にまた立ち塞がった。
マンティコアは同じように前脚で攻撃をしてくる。
今度は反対方向に飛ばされ、俺は茂みに突っ込んだ。
するとマンティコアはすぐに攻撃対象を彼女に変える。
俺は再度マンティコアの前へ舞い戻るのだが、飛ばされたり戻ったりするのは無駄なような気がしてきた。
今度はマンティコアの攻撃に飛ばされないよう耐えてみることにした。
三度マンティコアの爪が俺の身体を捉えるが、ちょっと意識をすればビクともせず耐えることができた。
傷一つ付かないどころか、風が身体に当たった程度にしか感じない。
「グオオォォォォォッ!!」
マンティコアは何度も動かなくなった俺を攻撃してくる。
うちわで煽られているような気分だ。
モンスターに感情があるか分からないが、マンティコアは驚いたような表情を見せると、ブレス攻撃をしてきた。
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マンティコアAはあなたに攻撃をした。
あなたはスキル「ブレス攻撃ダメージ軽減」を自動発動させた。
あなたはスキル「毒属性ダメージ軽減」を自動発動させた。
あなたは0ダメージを受けた。
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特に何も感じない。
それにしても、この世界のモンスターは好戦的だ。
最初のスライムからそうだったが、これほどのレベル差があるにも関わらず、逃げずに立ち向かってくる。
おかげさまで攻撃のできない俺は、どうしていいのやら。
何か適当なスキルでもないか、スキルウィンドウを開けてみた。
攻撃系のスキルはかなりあるみたいだけど……。
使ったらどんな恐ろしいことが起こるか分からない。
俺は溜め息を付きながら、スキル説明を順番に読んでいった。
ちょうど良さそうなスキルが見つけられないでいると、攻撃を受けるのと違うログが流れた。
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マンティコアAは攻撃に疲れた。
マンティコアAのヘイト値が0になった。
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なにそれ?
俺には理解できなかったが、マンティコアは攻撃を止め遠吠えのような声を上げると、飛び去って行った。
モンスターといえども疲労はするらしい。
なんとかこの場は切り抜けられた。
振り返ると、彼女は少し離れたところで座り込んでいる。
足の痛みで動けないのかもしれない。
「大丈夫ですか?」
俺は彼女に声を掛けながら近づいて行った。
なんだかヒーローになった気分だ。
元の世界にいた頃、俺は犯罪を犯したこともないが、とくに人助けをしたこともない。
『神様』には救うも滅ぼすも好きにしろと言われたが、人助けってこんな気分がいいものなんだなって、このとき初めて知った。
世界を救うヒーローなんて悪くないな。
俺はそう思いながら彼女に手を差し伸べた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
彼女が悲鳴を上げた。
まさかマンティコアが戻ってきたのか?
俺は後ろを確認したが、その姿は見当たらない。
地図に視線を向け、赤い点も探してみたが、彼女の青い点以外は近くにないようだ。
俺はもう一度彼女を見ると、
「たすけてください……お願いします……。食べないで……ください……」
彼女は泣きながら、俺を見て呟いた。
――――えっ??
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