第3話 異世界のシステム
俺は少しの間、その場で呆然と立っていた。
そのうち『神様』が戻ってくるなり、これは夢で目が覚めるなりするのではと、儚い期待を持ってもいた。
しかし事態は一向に変わることなく、時間だけが過ぎていく。
それにしても、異世界というより、ゲームの世界って感じだな。
すぐ左に見え、半透明で宙に浮いているメニューウィンドウのようなものが、ずっと気になっていた。
右に動いても、左に動いても、常に自分との相対位置は変わらない。
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・アイテム
・装備
・スキル
・ステータス
・地図
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これ、どう見てもゲームのメニュー画面だよな。日本語の表記だし……。
俺は試しに『アイテム』と書いてある部分をタップした。
するとメニューウィンドウとは別に、もう一つ新しいウィンドウが横に開く。
持っているアイテムの一覧が表示されるのだと思うが、何も持ってないため何も書いてない。
なるほどね。ロールプレイングゲームの世界だな、やっぱり。
無意識に上にスワイプすると、アイテムウィンドウが消えた。
スマホみたいな仕組みだ。
それから俺は『装備』『スキル』と順にタップした。
装備ウィンドウでは、武器・盾・頭・体・靴・装飾品の欄があるが、空白なのは何も装備してないからのようだ。
スキルウィンドウでは、スキルと思われる名前が大量に羅列されていた。
どうやら最初から色々なスキルが使えるようだが、多すぎるので確認するのは後回しにした。
そういえばレベルがどうのこうのって『神様』言ってたな。
俺は『ステータス』をタップした。
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名前 ゲオールギーナタンデリオン
レベル 510
種族 ハーフ魔族
HP 99999/99999
MP 99999/99999
攻撃力 99999
防御力 99999
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全部カンストしてるっぽいから、510ってレベルは高いんだろうな。
名前はどっから出てきたんだ? 俺がゲームするときに使う名前とも違うし、どこからが姓かも分からんし。
ステータスウィンドウを消し、『地図』を開いた。
浮かび上がった地図は、白い点滅が自分の位置を表現しているようだ。
これは便利そうだな。開けっ放しにしておくか。
操作方法は地図アプリと同様のようだ。
自分中心に地図は表示されているが、スワイプさせると動かすことができる。
また、指でつまんで狭めると縮小するし、広げると拡大する。
赤いのが敵キャラで、青いのが味方キャラってことかな?
地図上には無数に赤と青の点が映っており、どれも微妙に動いているようだった。
白い点滅である俺の位置からは、赤も青も近くにはないので、先ほどから見えている動物たちは、地図上では表現されてないことが分かった。
さて、これからどうするか。とりあえず地図を見ながらどこかに行ってみるか。
これがゲームなら、近くに最初の町があるはずだ。
そう思って地図の映る範囲を大きく広げてみると、最も近い町までも、それなりに距離がありそうだ。
まいったな。どうすりゃいいんだ。
近くに適当な場所はないか見ていると、少し離れたところに青い点が三つあることに気づいた。
最初のイベントはこれだな。
俺は少し楽しくなってきた。
この三人と会話することで、何かが起こり話が進んでいくのだろうと、ゲーム感覚になっていた。
この時の俺は、自分が醜いハーフ魔族の姿をしていることを、すっかり忘れていた。
青い点がある場所までは、歩いて二十分ほど掛かった。
おかげで地図上の距離感が掴めるようになったが、一番近い町までは歩いていける距離じゃなさそうなことも分かった。
電車やバスがあるわけなさそうだし、何日も歩けってことか……。
やはり違う目的地を探す必要がありそうだ。
そうこうしているうちに、青い点がかなり近くになっていた。
そろそろ見えてもいい頃なので、俺は辺りを確認すると、馬を止め木陰で休憩している人影を見つけた。
あの三人だな。
俺は近づいてみることにした。
ただ、ここがゲームの世界であっても、もともと人見知りの俺に、話しかける勇気があるかは別だった。
すでに緊張して鼓動が早くなっているのが、自分でも分かる。
三人が立ち上がった。
どうやらこちらに気づいたようだ。
こちらに向かってきたので、勇気は必要なくなったのがありがたい。
戦士? いや、騎士に見える。三人とも同じデザインの鎧を装備して、青いマントをしている。
見えるところまで近づくと、相手のステータスを見ることができた。
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名前 エドワード
レベル 36
種族 人間
HP 872/872
MP 513/513
攻撃力 623
防御力 457
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先頭を歩いてくる人間のステータスだ。
俺は愛想よく声を掛けようとしたが、三人とも険しい表情で剣を抜き、俺を囲むように立ち止まった。
「貴様ぁ! 魔族が何故こんな場所にいる!!」
エドワードが俺に剣を向けた。
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