第37話 魔法について

宿に帰り、先ほど得た魔法適正検査のロジックをイメージしながら自身を鑑定してみる。


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 ユウガ=スオウ

 職業:商人、探究者

 スキル:闇の刻印、存在感知、身体強化(大)

 状態異常耐性(中)、自動回復(小)、隠密、偽装

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 火:S    水:B    風 :A    土:B

 光:D    闇:D    時空:SS

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おお! 鑑定画面に項目が増えているぞ!

いつもより少し工程が複雑になるが、イメージ通り通常の鑑定結果と魔法適正の情報を同時に表示できた……!


――SS、S、A、B、C、Dで6段階ということか。

明らかに時空属性のSSが目を引くな……

確か時空属性ってレア扱いだったし、それがSSとなると迂闊にアイラ以外の人に話すのはまずそうだ……どんどん人に言えない秘密が増えていく。



「どうだったんだ!? なあ、黙って何もない空間を見ていると何だか怪しいぞ!」


「悪い悪い、ちゃんと6段階で適正が表示されてるよ。火がS、風がA、時空が……SSだった」


「何!? SSって……そんなの本当にあるのか!? ま、まあユウガのことだから今更という気もするが……」


何だか最近アイラの俺を見る目が変わった気がする……

そんな化け物を見るような目で見ないでほしいんですが……



「ま、まあそんなことより、ついでにアイラのも見せてもらうぞ」


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 アイラス=マティーニ

 職業:騎士

 スキル:身体強化(小)、状態異常耐性(小)、

 感覚強化(中)、情動の魔眼

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 火:C    水:B    風 :A    土:A

 光:C    闇:D    時空:D

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「――風と土がAだな、水がBで、火と光がCって感じだ。ロドス工房で火属性の指輪を買ったのは正解だったってことだな!」


「そうか、やはり火属性はその程度だったか。指輪の補助がないと今だに焚き火の火種を着ける位しかできないからな」


そう言ってアイラはやや自嘲気味に笑う。


「今まで水とか土魔法を使った時、そんなに大きく威力が落ちた感じはしなかったが、やっぱり適正度で変わるのが普通なのか?」


「初級魔法であれば正直そこまで劇的に変わらないかもしれないな……ユウガのように莫大な魔力量に物を言わせて魔法を打つタイプだと尚更だろう」


まあ俺は初級魔法しか使えないしな……

威力を上げるにはどうしても魔力を沢山注ぎ込むしかないのだ。


「むしろ中級以上の魔法こそ適正の差が大きく出ると思う。ギルドでも言われたが、適正が低いと術式の定着速度が落ちたり魔法発動時の魔力損耗が大きくなるんだ。他にも魔法の発動速度も変わってくる。大掛かりな魔法ほど顕著に差が出るはずだ……」


「なるほどな、今後中級以上の魔法を覚える時は得意属性を意識してみるか……そういえばもう一つ聞きたかったんだけど、アイラが言っていた《複合魔法》について教えて欲しいんだ」



それを聞いてアイラが露骨に嫌そうな顔をする――


「説明したら……どうせすぐに使いこなすんだろうな……というのは半分冗談として、簡単に説明しよう」


半分冗談ってことは、もう半分は……

いや、折角アイラ先生が説明してくださるのに余計なことは言わないでおこう。



「《複合魔法》というのは、複数属性の魔力を魔法陣に流し込むことで発動する魔法で《合成魔法》とも言われる。私が得意とする《雷属性魔法》もその一つなんだ」


「複数属性の魔力――アイラが雷魔法を使うとき両手を魔法陣に添えているのは左右の手で別属性の魔力を込めるため……ということか?」


「さすがユウガだな、ただその左右で別属性の魔力を練り上げることが難しいんだ」



確かに……やり方が想像できないな。

そもそも“属性を持った魔力”というのを練ったことがない――

いつも魔法陣を通すことでその属性の魔法を発動していたから、魔力を込める時はプレーンな状態であるはず……


「察しのいいユウガのことだから、どうやって魔力に属性を持たせるか考えていたんだろうが、結論から言えば《属性付与魔法》というものを使うんだ」


「ああ!そうだった……! そういえばアイラが買った指輪も火属性付与が付いてたな! それを使えば何とか……なるのか?」



パッと道が開けた気がしたが、よくよく考えるとかなり困難な道のりじゃないか……?


「気づいたようだな、複合属性の魔法を使うには、少なくともこんな手順になる」


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・魔力練成後、左右の手にそれぞれ魔力を集中させる

・左右同時に属性付与魔法を発動し、魔力に属性を持たせる

・発動したい複合属性魔法の術式を展開し、左右の魔力を流し込む

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「――とまあこんな感じだ」


アイラが複合属性の魔法を簡単にマスターされたら寝込むと言っていたのがよく分かった…… 

実際には同時に属性付与魔法を使わなくてもいいのだろうが、戦闘で使うなら同時にできるレベルでなければ使い物にならないだろう。


そもそも詠唱魔法自体が魔力の“ロス”が多いやり方だ……

威力を出すには最初に練り上げる魔力が大量に必要だし、大量の魔力に属性を付与するには更に多くの魔力が要る――



「アイラって18歳って言ってたよな? その若さでこんなレベルの魔法を使いこなすって……」


それを聞いたアイラは満面の笑みを浮かべて肘でわき腹を突いてくる。


「やっと私の凄さが分かってきたようだな! こう見えて結構努力してきたんだぞ?」


「この前レイスを倒すときにドンピシャのタイミングで雷魔法を当てていたが、今の話を聞くと改めて凄い技術なんだって理解したよ……やっぱり頼りになるな、アイラは」


「あ、あまり褒めすぎるな! そういうのは慣れてないから適度に頼む」


アイラは照れるとすぐ耳が赤くなるな。

今度からもっと褒めてあげることにしよう――



「一応今後のために、今持っている魔法をお互い確認しておこうか」


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 ユウガ=スオウ

 《火球ファイアボール》《水弾ウォーターバレット

 《風刃ウインドエッジ》《砂撃グリットショット

 《堅盾シールド》《小回復ヒーリング

 《伝心魔法》

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 アイラス=マティーニ

 《風刃ウインドエッジ》《嵐破ストーム

 《砂撃グリットショット》《土壁アースウォール

 《雷撃サンダーショット》《雷渦サンダー・ボルテックス

 《堅盾シールド》《魔防盾マジックシールド

 《万能盾マルチシールド

 《属性付与・風》《属性付与・土》《属性付与・光》

 《小回復ヒーリング》《隠蔽魔法》

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「さすがアイラだな! 俺の倍も魔法を使えるなんて」


「ま、まあ私は4歳から魔法に慣れ親しんでいるからな……! ユウガこそ短期間で基本的な魔法をほとんど押さえているじゃないか」


「これも〈検索〉の力のお陰さ! まだ術式を解析しただけの魔法がいくつかあるから追々覚えるとするよ。 複合魔法も今後の課題だな……」


「ユウガの適正から言えば、火属性と風属性を合成した《爆炎魔法》を覚えるのが優先だろう。あれは中々派手で威力があるからユウガ好みかもしれない」


「おっ!それいいね! じゃあまずは火と風の付与魔法から覚えていくとするかな……!」

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