第29話 次なる依頼
翌日――
久々に酒を浴びるほど飲んだため、さすがに二日酔いかと思ったが意外と何ともなかった。
状態異常耐性のお陰だろうか……酔いはするが次の日に残らないなんて理想じゃないか……!
そんな事を考えている俺とは対照的にグロッキーな宿屋の主人と村長――
俺たちはふたりにお礼を言い、馬車に乗って村を後にする。
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再び地獄の悪路ツアーを終え、王都へ戻って来た。
早速ギルドへ向かい、受付で任務完了の報告と素材買取を依頼する。
――アースリザード22体、ワイバーン4体の素材を収納バッグから取り出すと、ギルドのロビーはたちまちざわつき出す。
ギルド職員総出で査定と運搬を行ったのだが、結局作業が終わって報酬を受け取れたのは2時間近く経ってからのことだった。
受け取った金額は……しめて金貨2枚と銀貨60枚!
更に、これで報酬累計3金貨超えという条件をクリアしたため、今回の依頼達成をもって銅級冒険者へ昇格したのだった。
「まずは銅級……おめでとうユウガ」
「ありがとうアイラ、これもパーティを組んだお陰だ。このままどんどん上を目指そう……!」
「おいおい!すげえじゃねえか!二人でリザードをあんなに狩るなんてよお!しかもワイバーンまで!」
銀級への第一歩を踏み出すべく次の依頼を確認していると、いかにも近接タイプ――という風貌の大柄な男が声を掛けてくる。
ドワーフだよな……?身長が2m近くあるぞ……!?
「はあ……どうも」
とりあえず返事をしたが、若干素っ気なさ過ぎたか――?
いや、正直あまり関わりたくないタイプだ。
適当にあしらってさっさと引き上げよう。
「何だ何だ、ずいぶんつれないじゃないか!……まあいい、本題だ。お前たちの実力を見込んで依頼をしたいことがある!」
「――依頼、ですか?」
てっきり稼いだ金で一杯おごってくれとでも言われるのかと思ったが、どうやらそうではないようだ……
「今から大体半年くらい前か……南部のカルズという村にダンジョンが発生した。――まあダンジョンと言ってもお前たちが想像するような巨大なもんじゃなくて、精々広めの洞窟って程度のもんなんだが……」
「それが、どうしたんですか?」
「ああ、ダンジョン自体は大した事ないんだが、そこから漏れ出す魔力と瘴気がちと問題でな……! 村とその周辺を飲み込んで巨大な〈魔力だまり〉を作ってやがるんだ!」
男は苦虫を噛み潰したような表情で話しを続ける。
「知っての通り、魔力だまりに瘴気が入り込めばそこは魔物の楽園だ。あっという間に住人は住処を追われ、村は魔物の巣窟になっちまった――!」
魔力に瘴気……確か黒龍やギルドの受付でもそんなことを言っていたな。
その二つが合わさると魔物が発生するのか……
「――そこで、国王は〈神都〉へ浄化部隊の派遣を要請したってわけだ。 だーいぶ待たされたが、やっとこさ3日後に神都から〈第四〉の連中がやって来ることになった。できれば関わりたくない連中だが、この際仕方ない……」
そう言ってわざとらしく煩わしそうに頭を掻く大男。
「俺達冒険者ギルドには道中の露払いと、浄化作業中の周辺警備をせよと国王から要請があった。――つうわけで、今は俺自ら腕の立つ冒険者を集めている最中ってわけだ!」
何だかいきなり色々なワードが出てきたな……
神都、浄化、第四……?
この大男の話し方からして、この世界では常識の類なんだろう。
まあそれは後でアイラに聞くとして――
「状況は何となく分かりました。ところであなたは何者なんですか?」
「ははは!こりゃすまねえ! 俺もまだまだ頑張りが足りないってことだな!」
豪快に笑いながら、今度は襟を正して話し始める。
「俺はディーゼル=セルノゼム。このロクステラ冒険者ギルドのギルドマスターをやらせてもらってる者だ!」
――!?
なるほど、そういうことか……というかそんなの気づくわけがない。
どう見ても現役バリバリの“ガサツな”冒険者って風貌じゃないか……!
「おーい! ちゃんと仕事しろよ~!」
「はははっ!!おっさん、髭剃ったら少しはそれらしくなるんじゃねえか?」
――あちこちから飲んだくれ冒険者たちの野次が聞こえてくる。
「うるっせえ! 俺は生涯現役!死ぬまで冒険者だ!! 机仕事なんて二の次三の次、絶対現場主義を貫くぜ!!」
すごい、何だかすごい人が目の前にいる――
早く帰りたい……
とりあえずアイラを見て現実逃避でもしようかと振り向くと、丁度同じタイミングで彼女もこちらを向いたためバチっと目が合う。
アイラも同じことを考えていたのか……?
「さて、バカどもの相手はもういい。話の続きだが、報酬は金貨1枚! 働きによっては追加報酬を出すし、素材ももちろん買い取る!」
その言葉に、周囲から「おおー」という声がちらほら聞こえてくる。
「依頼を受ける場合は明日の昼までに受付で手続きをしてくれ。 以上!頼んだぞ!!」
そう言ってディーゼルは2階の執務室へ戻っていった。
「――何だか嵐のような男だったな。それで、どうする?ユウガ……」
「うーん、まだ正直よくわかっていないが、最低金貨1枚は魅力的だ。――この件を含めて教えてほしいこともあるし、一旦宿へ戻ろう」
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