第21話 ゴブリン退治

――町はずれにある洞窟


「また洞窟に逆戻りか……」


そんな若干自嘲気味なことを呟きながら気配をひそめ、洞窟付近の茂みに身を隠す。


入り口にはゴブリンが5匹。

――いかにもゴブリン、という見た目だ。


小学校低学年くらいの身長で、細い体毛がまばらに生えた頭に尖った耳、目はギョロリとしていて締まりの悪い口元からは涎が垂れている。


実際にこの目で見てみると、何とも醜悪な姿をしているな……



――幸い洞窟の周囲には燃えるようなものがない。

丁度いい機会だ、正直あまり近づきたくないのでここで魔法を実践投入するとしよう。


火球ファイアボール》!


左手を突き出し巨大な火球を放つと、瞬く間に2匹のゴブリンが叫び声と共に燃え上がる。


異変に気づいたゴブリンが怒りの形相でこちらへ向かってくる――

俺は即座に右手に握ったナイフから横なぎに魔力の刃を飛ばし、ゴブリンが近づいてくる前に両断する。



「更に奥から5匹――音を聞きつけて出てきたか……!」


幸いなことに追加のゴブリンたちは一斉に洞窟から出てきたため、入口付近で一か所に固まった状態だ。

俺はすぐさま再び火球を放ち、これを一網打尽にすることに成功する。



その後も出てくるゴブリンたちを順番に仕留めていき、やっと静かになったため存在感知で洞窟内を探る。

どうやら洞窟といっても浅い洞穴レベルだったようだ。

内部にあった生物の反応は全てなくなっていた。



「さて、討伐証明用の耳を集めないと……」


事前に確認した所どうやらゴブリンは素材にならないらしく、俺は手際よく耳だけ切り取ってカバンへ入れる。

炎で焼いてしまったため耳が残っているか心配だったが、何とか残っていて一安心する――


しばらくして回収作業を終えた俺は、山積みになったゴブリンの亡骸に魔法で火を放った。

――依頼を受ける時、受付の女性からできれば素材にならない魔物の死骸は燃やしてほしいと言われていたからである。



なんでも魔物というのは、死んだ後にその死骸や汚染された土壌を媒介にして再び発生してしまうらしい。

瘴気や魔力が濃い所は特に注意が必要とのことだ。

確かに言われてみれば、黒龍が自ら消滅を選んだのも瘴気や魔力によって自らが変質するのを避けるためだった。


せっかく魔物を討伐してもまた復活してしまったら意味がない。

将来の魔物による被害を抑えるためにも、極力“火葬”するように心がけようと決めたのだった。



依頼を終えた俺は早速ギルドへ戻り、報酬を受け取る。


今日の稼ぎはゴブリン討伐報酬1銀貨と、薬草採集依頼で受け取った報酬50銅貨+売却で得た60銅貨――しめて2銀貨10銅貨だ。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


3日後――


この数日は依頼の受注と消化を繰り返しながら過ごしていた。

やればやるほどお金が貯まるため、この仕事は思ったより楽しくやれている。


ただ、目の前の仕事だけやっていると本来の目的を忘れてしまいそうになるため、稼ぐ金額に具体的な目標を設定すべく、武器・防具を扱う商店巡りを行うことにした。



一通り見て回ったところで俺はため息をつく。

どれを見ても値段と性能でしっくりくるものがなかったのだ。


やはり行商で見たロクステラ産は相当なクオリティだったんだな……


ただし、ダンジョン産出品と呼ばれる、いわゆる古代魔道具アーティファクトレベルになるとどれも興味深い性能だった。

当然値段の張るものが多く、俺の所持金では全く手が出せなかったが……



商店巡りの最中、また一つ発見があった。

装備の中には戦闘を有利に進めるために魔法の術式を付与したものが存在するのだ。


特に表面に魔法陣が浮き出ているわけでもなく、一見すると普通の装備と変わらないが、そうした装備を〈検索〉すると、魔法の術式まで解析できることが分かったのだ。


もちろんアーカーシャ内に記憶された魔法陣の構成情報が分かっただけであり、魂への記憶をさせなければ魔法は使えない。


だが、これは術式の入手手段としては非常に優秀なため、今後も術式収集は続けて行くことにした。


当面はカーフさんから貰った水の初級魔法と、装備品から入手した盾魔法を習得しつつ、良い装備を買うためロクステラ王国へ向かうことを決定したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る