其の伍 みーちゃん?!
「もしかして……小学ん時に、私らん
「な、なんねぇ、奈津美……どげんしたと?」
いつもは
「ホントやん……心臓止まるかと思うたよ?」
同じ様に大袈裟に胸を押さえている奏に、少し涙目で奏の腕を掴んでいる敦子。だが、何故か美彩だけは嬉しそうであった。
「みーちゃん?!」
そう言うと美彩を指差す奈津美。その顔は奈津美の声に驚いた三人よりも驚きに満ちている表情をしていた。
「当たり♡」
美彩が奈津美に抱きついた。ふわりといい香りがする。奈津美の様に近所のドラッグストアで買った安売りのシャンプーの香りではない。
すんすん……
すんすんすん……
思わずその香りを何度も嗅ぐ奈津美を皐月がじとりとした目で見ている。しかし、それに気づかない奈津美が更に美彩の匂いを嗅ごうと鼻を近づけた。
「みーちゃんって、あの?」
横から奏が二人の間に割り込む様にして尋ねた。その問いに奈津美の体から離れた美彩が奏の両手を掴んだ。
「思い出してくれたん?」
小学生の頃、皐月達四人は今と変わらず近所のクリークで釣りばかりしていた。その頃はまだ四人共、鮒や鯉、ブラックバスばかり狙っていた。そして四人の家の近所に夏休み等の長期連休を利用して、父方の
あぁ、そうだ……みーちゃんだ。
皐月も思い出した。
中学校に上がる前頃から、美彩を見掛けなくなった。それから、四人は美彩の事を忘れてしまっていたのだ。
しかし、美彩は覚えていた。会わなくなって四年程の歳月が流れていたのに関わらず。
「よく私らだって分かったね」
奏が嬉しそうにぶんぶんと美彩の手を振る。
「うん、実はね……こん前の土曜日に引越して来た時、ぶらっと散歩をしとったら、四人が釣りばしよるんば見たとよ。そしたら、あん頃の記憶がぱぁってなってさ、やけん声ばかけようっち思ったとばってん……とても楽しそうやったけん、邪魔しちゃでけんち思って、そん時はやめたんよ」
美彩はそう言いながら寂しそうに笑った。
「なぁんば言いよっとねっ!! 遠慮せんと声ばかけんけんたいっ!!」
奏の言葉で嬉しそうに微笑む美彩。敦子も美彩に追いかけられる理由が分かったのか、少しほっとした表情をしている。
そう言えば……あの頃からみーちゃんは奈津美にはやけに懐いていたなぁ……
当時を思い出している皐月に美彩が近付いてきた。そして、何を考えているのか、美彩が皐月をふわりと抱きしめたのだ。
「皐月ちゃん……会いたかったぁ……♡」
「はぁ?!」
ほんのりと頬を染めている美彩。奈津美とは明らかに違うハグの仕方に戸惑いを隠せない皐月に、奈津美や奏達がきゃぁっと黄色い声をあげた。
それ行け!我らは釣り同好会‼︎ ちい。 @koyomi-8574
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