story 10 -tasteful-

 この敷居の高い、黒地に近い薄く茶色い看板と薄汚れた金色の軽やかな綴りのフォントが夕日に輝き、出入り口には誰にでも開けられそうに軽いが、出口から出てきた男は近寄り難い、そんな店に私は入るのを躊躇するのは常人と言っても私としても満足に至らない。

 私は自尊心を鼓舞する。

 なかなか度胸は据わっている、そう自負していた。

 中々若い頃はそうであった。今もそうであろう。そう願うのもまた自分自身である。

 私は前向きだ、その一歩はかなり重いようで少しばかりか重かった。

 緊張感は急場を凌ぐときには持っていた方がいい。

 ただ、度を越した緊迫に近い感情は場に飲まれていて相手に失礼だ。

 私は恐れている。そんな気分に相手をさせてしまう。

 こんな失礼なことはあっていいのだろうか、それはならない。紳士たるもの話し相手を不愉快にさせてはならない。相手に何か勘付かれてしまうからだ。

 そしてこの軽い、開き扉を押し進んだ。

 店内には人が居た。指で数えられるくらいの人数だ。話の解らない顔ぶれはいないようだ、歩みながら話を薄らと聞く。どうやら頭の悪い輩はいないらしい。

 こういう場の空気を掴み切るにかけては長けているが、違和感がある。

なるほど。


『 DETECTIVE 』


 私のジョブアシストがあるのだろう。これはゲームだったが迂闊にゲーム感覚にプレイしてはいけない。

 人付き合いは大切に、乱暴者は品が無い、我が儘は嫌われる、損な役回りはしない、抜け駆けはしない、行動は閃いた思いつきで、迷惑は掛けてから考える、何事も単独行が動きやすい。

 これが私一人の私自身のテーゼである。

 ここは都合の付きそうな店である、そう見受けられた。

 ただ、甘く見る余裕は懐一つ分は持たせておく。

 何か共に良い時間を過ごしている、マスターらしき人と店員が話しているところに

 その暖かな空気にそっと一口を挟んで何かを頼むことにした。

「コーヒーをブラックで一つ頼む。なるべく濃く。」

 眼が冴えると財布が冷え込んでいても、どうにかなるはずだろう。

「ああ、わかったよ。お兄さん。他に何かはご注文はある?」

「私が砂糖菓子の一つや二つ何か注文するほど気の効く人間ではないよ」

 そうやって店員の子に答えて私は席についた。

「長話は好きかい?」

「初見さんは手短めがいいと思うよ。」

 ここは悲しげにフラれる自分に思いを込めて、何かまた言ってみよう。

「そうであるならば、長くなるかは君次第でいい。」

 側に居たマスターが目をゆっくりと閉じて、その場ではにかんでカップを奥へとしまいに行く、そして店員はこの客である私をまかされた仕事に当たるしかない。

「では何か面白い話はないかい?」

 このゲームの素人は素人と明かさなければ素人であるかないかは判断できないらしい。これは公園内での着地点から、この席につくまでの間で学ぶ事ができた。

 ならばここで、人並みにプレイしている位には装えるか試してみよう。

「面白い話?なにかあるかな。お客さんはどう?」

 自分の情報をタダで初対面に渡せるほどの年齢ではないか、この顔通り子供だろう。

 仲良くなりたいわけでもないが、余りにも悲しい、お手の物である。

「では、面白い話か、何から話そうか。こんな話ならどうか。」

「どんな面白い話を聞けるか、楽しみです」

 このスマイルさは悪くない気をさせてくれるが、何分本職柄面白くない。客商売なら当たり前の仕草くらいの一つとして当たっても遜色ないはずなのに私はそこが外れているのであろう。

「このゲームに入った経緯を話そうか、それが面白い。ただの身の上話ではないのは確かだ。」

「そうですか、では聞かせて下さい。」

「話、半分で聞いていて欲しい。与太話みたいなものさ。」

 そう言うと、まぁ悪い下心だけあるおじさんというイメージは付かなかったようだ。

 自分の事を信用させるには、自分の事を話すのがまず自分を信用して貰う一歩である。これはそこそこ会話の実用書で子供が得そうな知識でもある。

 ただ実際、コミュニケーションで取り入れる事ができるかと言ったら独り善がりになりがちである。差し引きが難しいのは何事もそうであるかもしれない。

「これは、とある徹夜での仕事上がりの、昼下がりで起きた事なんだ。窓を眺めてみると雪が降っていたものだから、そこで公園まで出かけた。雪が積もった公園には何と、女の子がいたんだ。」

「そういう子もいるものですね」

「ただ高校生から大学生だろうな、学校はサボって一人で遊んでいるものだから目に付いた」

「そんな子は危ないから補導されたら良いかもしれませんね」

「それで、とりあえず近づいてみた。どこの娘なのか聞いてみたんだ。」

「失礼な話の出だしですがいいのかな、そうしたら?」

「何かとんでもない事を言ったんだ」

 くすくすと笑い込みながら聞いてきた店員の子もなかなか可愛らしかった。

「そうしたら彼女は、『空から降ってきました!』とあわてて答えた。」

「それは漫画みたいな話ですね。」

 乗り気で聞くようになったらしい。少し前のめりに。

「まさに空から降ってきた女の子だったよ。可愛らしかった」

「それは漫画みたいな出会いですね」

 くすくすと笑った。

「そこで一時、話しをしていたら喫茶店で話をしないかと誘っ…」

 私は一呼吸置いて、コーヒーを口に含んだ。

「誘われたんですか?」

 含みながら言う。ナンパとは取られないだろう。この話し口からすれば。

「誘ってみた」

「それは良い昼下がりですね」

「続きがあるのだが、今日はここまでだ。」

 すこしむっとした顔つきで怒っていたが、私は続けてこう言う。

「この話はこのコーヒー代ってことはいいかな」

「マスターに聞いてみます。多分良いとおっしゃりますよ。」

 マスターは奥で皿を拭きながら。こくりと背中腰に笑ってるのが伺えた。

「続きの話が聞きたいのですが。」

 余り、顔つきを明かさずに話をしていたが前のめりになって微笑んできた。

「続きには砂糖菓子を頼もうか。」

「贅沢な人ですね。」

 私は小首を傾げていると。

「そう、では強いて言うならば、パンケーキを頼もう」

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