story 9 -street-
『この街には親切な人はいない。』
道行く老人は私にそう告げた。
目の前にある公園の簡易地図を見て私は安易に自分の足が興味・好奇心だけで街を散策しないように、自戒をして歩み始めてみる。
街中でも飲食街なら、私のコミュニケーション能力を駆使すればどうにかなるかもしれない。ちょっとしたお茶を飲もうという事もできるかもしれない。
私は歩みを東口の飲食街へと足を向ける。
エリア毎に区分けしているのは初見には優しい街作りであるが、都市スタイルとしては機能的から離れている設計ではる。一目で解るには易かった。
着地点としてここを選んだのは正解かもしれない、恐らくこの街のMAPで言えば、中央なのであろう。そうして私はこの人がいもしない閑散とした公園を出て飲食街へと歩み出した。
そう、目的はナンパ、それとは形容するには私については失礼であるが、見る人が見ればこの高等話術を駆使した何らかの技術に近いこの読心術があってこそのナンパである。
どのようなナンパであるか。若い頃なら成功したことがあるが今現在でもできるだろうか。
ナンパをしておごって貰う。
案外極端に難しい事をするのだろうと思われ、私は苛まれるだろう。
だが、ここでなら通じるかもしれない。
やってみせよう。
親切そうで女性としての防御の基本がなってない子が丁度良い。
明るくて元気そうな子であると尚良い。
ほら、人がちらほらと見える小道から大通りへ入っていくと閑散としていた公園とは対照的に飲食店街が広がってくる。そこにある往来は街の風体に溶け込むようだった。
フレンチを食べるには丁度の良い気分で洒落ている。
イタリアンをオープンテラスで食べるにもいいだろう、がっつりと中華を食べるのもいいかもしれない、もちろん名店のような和食もある。ファーストフードなんかもある、なんでもある。だから一人くらいはいるだろう。私にとって都合の良い女性がいたりしても。
残金0 enからのスタートするには丁度の良い肩慣らしだ。
道行く一人の女性にふと目が会った。この女性とお話をしてみよう。そう私は決め、この女性に声を掛けるようコツコツと靴音を軽快に鳴らして近づいた。
「今日はどうだい?こんな良い天気であることだ。一緒にお茶でも?」
「間に合ってますので」
そんな寂しい言葉を投げかけられた。私としても幸先が悪い。
「そうか、それでは良い午後を」
そうやって私は退いたが、ナンパは一件や二件で決まらない。
目標はおごってもらうこと、それを忘れてはいけない。
めげずに挑もう、もう一件、次に一件、実におしいが一件、ああこの子なんてはいいではないかと空振りをする。
「度を超しているナンパの失敗率だ。神に見放された」
ちなみに私は運勢を信仰してはいない、急場のときは自らの運気に頼ることもままある。
途方に暮れていると日が沈んできた。どうしたものか。ここで何をしようにも金を持っていないと何もできやしない。呆然としていた。
そういえばと、ふとあの子から、ここのオンラインゲームのURLを貰った彼女と行ったカフェテリアでのやりとりを思い出す。
ならば、カフェでなら彼女と会えるのではないか。
私は足取りを変えて、左右の店並びを注意深く睨みながら、集中して探索してみた。
カフェには三つあった。
若い子が好きな店住まいと、女神のエンブレムを看板として展開している大手カフェテラスと、シンプルでモノクロな色合いをしていてモザイクに椅子やテーブルが散りばめられたかのように景観がスマートに作り込まれた店を見つけた。
ただ、彼女はここがいそうだろうと私はアンティークをメインテーマにした外観が木目調の喫茶店に足を踏み入れた。
もちろん金を持たずに。
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