story 7 -strange park-

 点になっていた私の目を首を傾けそして体制を反転して、見ていた陽光の光源を見極めて、起き上がる。

 そうして気を取り直して公園の端から端までを見渡す。

 ここは見覚えはないが、既視感はある。そんな所で私には特に言うまでもないものしか見えなかった。

 興味の的になるものがない何処にも現実として受け入れられるものばかりであり、異端な物は見当たらなかった。

 人の往来はまばらでもある、だがオンラインゲームであるMMOじみた不自然な賑わいがない、そこには通行人としか言えば正しいかもしれない人影しかいない。

 このゲームの特色と言うとどういう所なのだろうか、無ければ無いのでいいかもしれないが、ゲームの利用人口が上位であるのは、何かしら理由があるとして不自然ではないはずだ。

 何をどうすればいいゲームなのではないか、どうだろうか。まだ立ち上がって辺りを見回しているだけの段階の私で解る事ができる気もしない。

 加えて、ここは現実でないか確認もしたかった。先程の洒落た服を着た女性の一言から推察するに、ゲームではあるのだろう。

 ここに合わせてもう一つよぎってくる模様が一つ見えてくる。

 夢ではないのか?これは確認するのは至極簡単であるといえる。

 頬をつねるかつねられるのが一番であるが、近くに噴水があるので水をすくってみた。

 こんな文学的な目の覚め方もいいだろう。

 そうして私は一口その手から溢れるような水を口に含んでみた。

 おいしい綺麗な水である。

 ごくごくと続いて飲んでみるとおいしかった。

 これは後学しとくといいかもしれない。最近のゲームは水も美味しい。

 おかしいところが無い、私は私を疑っているのに私はこのゲームを疑えない。

 なぜなら、どこにもおかしなオブジェクトや突飛なNPCがいない上にプレイヤーが少ない。全体的にリアルテイストなのかと思ってログインしてみれば、リアリストが作ったのだろうと断定せざるを得ない。

 ここは現実では無いらしい。

 一声誰かに声を掛けてみようか。

 私のそのふとした判断から私の眼に止まったのは散歩をしている老人であった。

「ここに来てどれくらいですか?」

「すみません。失礼ながらお聞きしたいことがありまして、私はこのゲームが不案内な者なので、右も左も分かりません。どのようにしてゲームプレイをして進めればいいかと思いまして、お話をさせて頂いた次第です。」

 ここは腰を深くさげつつ話をして玄人様のお話をお聞きしよう。

「ゲームは好きかね。自分の一番好きなゲームを思い浮かべてみろい。」

 怪訝な顔をして私は答えるのを躊躇したが話し掛けたのは私からだ。

 そのまま答えるのが自然なはずだ。

「私はかれこれ十年ほどFPS・TPS・RTSをやっています。ただMMOは触ったことがないもので。」

 老人は私の顔を不思議そうに見ると。

「ここはVRMMOではないよ。よくここに辿り着いたものだ。軽く笑みを浮かべていた老人に軽く腹を立てた私はぶしつけにこう質問してみた。」

 私は自然な自分をこの老人に対して見繕って、接近を試みようとした。

「普通に話しかける分にはいいけども、そういう言い方は伊達じゃないよ。」

と、そのまま素通りしようとする。

「私に何か違和感がありますか。」

「何も無いよ。ここは何をしてもよく自由なんだ。ゆっくりと過ごすのもいい。」

 そのまま本当に通り過ぎていった。

 ただ一度私の方へ振り返り。

「なんだか待って頂けるのですか」

 私は肩を落として、嘆息を吐きながら話を投げかける。そうしたならばこういう返答をする老人だろうと思ったような事を私に言い聞かせてくれた。

「待ってくれるのは時間と、良い人だけしかいないよ。」

 なるほど金言だ。

 そうして私は老人が公園端まで行くのを見送った。

 もちろん何のイベントも無い。

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