story 4 -Login-
悩ましい頭を抱えつつ家に私は帰り着いた。ハンガーを探して、羽織っていた軽く湿気ったロングコートを乾かすような形で暖房を使って乾かすよう、冷え切った部屋の暖房を暑めに設定した。そのコートからすかさず紙ナプキンを取り上げて、どかりとソファへと座る。
窓から差し込む陽光に当てるも何の変哲も無い紙切れだ。
そこには走り書きと英語の一連句が書いてあった。
『ここに来てね。The End of Eschatology』
またこの紙を翻して裏表と見るが、何も変わり無かった。
「終末論の終焉。何かの小説かゲームのタイトルか」
ソファに腰掛けていた体の身を起こす。
パッドを触って立ち上げて、器用に四指でパスを入力してでトップ画面を出す。
ブラウザを立ち上げて、このタイトル名を入力してみる。
検索結果から出てきたのは一種のオンラインゲームであった、
そういえばあったなとSNSや掲示板で見た気もする。名前だけは聞いていたか。
創設当時の名前だけ知っていて、今は晴れてここまで順調に成長して、何処もかしこも検索結果TOPに出てくるかなりの付く有名タイトルか。
昔、興味を持ったのはVertialRealという仮想現実空間を自宅で味わえるという点でありデザインもスタイリッシュで綺麗な描画をしていて、異端作であった。
検索結果から見てレビューをずらずらと全て並んでいた。時間を掛けて読むとしよう。
私はソファから立ち上がり、PCを立ち上げて、じっくりとまぶたを上げて見ようと、コーヒーを口にしたくなった。コーヒーは落ち着くためであり、生活のメインである。
その足で豆袋から三杯ほどの豆をすくい、コーヒーミルマシンに向かって入れる。
風情を気にしないのもいいかと妥協して買ったミルだが、買ってみたら買ってみたで、良い買い物をしたそんな気分をさせた。
このミルマシンのモーター音が止まると、香ばしい良い香りがした。それをまたまた上等なコーヒーメーカーに水を注ぎ込んで、フィルターを棚から人差し指と中指でスッと挟んで、マシンで出来上がった粉をさらりと乗せる。
さてとコーヒーブレイクと行くまでに調べ物をしようではないか。
PCの前に奥まで座り、評価について読んでみた。
そしてなるほど、一通りサイトを覗いてみたところ。頭の中で整理してみよう。
従来はMMOと言った、ダンジョンやアイテムやモンスターと戦ったりする、アクションRPGをWebで体験できるという仕様のゲームらしいゲームと言ったところか。
本作は実生活を体験できる。それならば、家から出ればいいではないかと思われるが、Webでも生活してみてもいいではないかそれが着眼点だった。
従来のMMO内で生活してチャットをしたりしてWeb内でのコミュニケーションツールとして実現しているが、今作はそれを全面に押し出しているとのことだ。
私は不器用では無いが、コミュニケーションには不器用である。
ゲームやネット世代はよく直接でのコミュニケーションが不足しているから簡単な意思疎通もできないと揶揄されてることもあるが、そんなこともないだろう。
何処に行っても意思疎通能力や空気を読むといった事は重要である。
当たり前の事であるのに、多忙だったり新聞・ニュースを妄信する上の世代の言葉は私にはより辛辣な発言に見える。
だから私は一人で働いている。これでいいのさ、全くだ。
話は戻って、VR機器Resonance Eyesは昨年、購入だけ考えて遊び心無く買ってしまった。それで 遊び方も解らず、そのまま棚のインテリアとして今は現役活躍中である。
これで損した気分にはならなくなった。よしプレイしてみよう。
最初にID登録をして、基本的な設定を見て、登録事項を入力してみる。
『我が社でのトラブルに関しては自己責任で』
最後にこのような一文を見たのは引っかかったが、何か賑やかな所なのだろう。注意書きの不要な自分にはすぐ忘れてしまいそうだ。
DLページに自動リンクで画面が映る。データ容量や必要スペックを気になったが、問題なくプレイはできそうだった。
最新ハイエンドクラスほどまでは必要がない。旧ハイエンドクラスの我がマシンも現役でまだまだ使えそうだ。
そうしてDL時間はあっという間であった。
VR機器Resonance Eyesを接続するまでもなく、無線でDL。全く最新技術とは得てして凄いもの、そのまま寝転がり。仰向けに寝る。
あの彼女とはここで会えるのか。不安無く私はログインした。
私はこのVR機器と意識は同期させた。
コーヒーのほのかな香りがした。コーヒーメーカーのビープ音が気分を少々台無しにした。これは格好の付かない、物語の始まりのようだ。
私の意識は吸い込まれていった。この香りと共に。
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