第36話 赤ずきんちゃんと恋する猟師

 具合の悪いおばあちゃんのお見舞いに来た赤ずきんちゃん。

 おばあちゃんのふりをしたおおかみに尋ねます。


「おばあちゃんのお耳、どうしてそんなに大きいの?」

「おまえの声をきくためさ」

「おばあちゃんのお目目、どうしてそんなに大きいの?」

「おまえのかわいい顔を見るためさ」

「おばあちゃんのお口、どうしてそんなに大きいの?」

「それはね……おまえを食べるためさっ!!」


 おおかみが赤ずきんちゃんに襲いかかろうとした直後、ドキューン!! と荒々しい音がして、銃弾がおおかみの鼻先をかすめました。

 猟銃を手にした男が戸口に立っています。


「赤ずきんは俺の女だ。今すぐに失せろ。じゃないと、今度はおまえの腹に銃弾をお見舞いする。5、4、3、2……」


 カウントダウンを始めた猟師に、おおかみは慌てて逃げました。

 赤ずきんちゃんはキョトンとしています。


「ええっと……おばあちゃんじゃなかったのかな?」

「おおかみの顔とおばあちゃんの顔は全然違うだろう? おおかみが、おばあちゃんのパジャマを着ておばあちゃんのベッドで寝ているってだけで、騙されないでくれ。リルエは純粋すぎて心配になる。やはり俺が側にいて守ってあげないと駄目だ」

「どうしてわたしの名前を知っているの? あなたは誰?」

「俺はこの国の第二王子。うさぎ狩りにはまって、三ヶ月前からこの森によく来ている。名前は君のおばあちゃんから聞いた」

「お、王子さまーっ⁉」


 赤ずきんちゃんは畏れ多いとばかりに距離をとろうとしますが、アルオニア王子は逃さないとばかりにグイグイ迫ってきます。


「オオカミに言っていたことを、もう一度言って」


 アルオニア王子に頼まれて、リルエは先ほどのセリフを繰り返します。


「おなたのお耳はどうしてそんなに大きいの?」

「リルエが好きだよ。君が欲しくてたまらない。どうか俺のお妃になって欲しい。……俺の耳が大きいのは、プロポーズの返事を聞くためだ」

「どうしておめめがそんなに大きいの?」

「野原で花を摘む君を見た瞬間に、心を奪われてしまった。気がついたときにはもう、恋に落ちていた。君に夢中なんだ。……目が大きいのは、俺の瞳に君を映したいから。俺の瞳に映る女性は、リルエひとりでいい」

「どうしてお口が大きいの?」

「それはね、赤く熟したおいしそうな君の唇を奪うためだ。……リルエ、キスしよう」

「きゃー!! ダメですダメで……んぐっ!!」


 赤ずきんちゃんは最後まで言い切ることができませんでした。気がついたときには王子にベッドに押し倒され、情熱的なキスの雨が降ってきたのでした。

 甘くとろけるキスに放心状態になってしまった赤ずきんちゃんを、王子様は城に連れ帰ったのでした。



 おしまい。

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