第9話囚われの姫(予定)と王様

「……ま。……さま。姫様ッ……!」


 誰かに呼ばれた気がして、目が覚めた。


 うっすらと開けた目に映ったのは、どこか憔悴した様子の私の専属メイド──リサだった。


「り……さ?」


「姫様ッ!姫様がお目覚めになりました!」


 リサは、私が目を覚ましたのを確認すると、いきなり部屋を出て行ってしまった。

 ……それにしても、何か変な夢を見ていた気がする。

 そう、あれは確か幼い女の子の夢。

 私と同じ白と青のグラデーションの髪だった。

 あの水晶は何かな?とか何か無茶苦茶知ってる顔だったなとか、色々考えたいことはあるけど、今はまずこの状況を打破しなければならない。


 この状況というのは──


「フローラ、息災であったか。」


──この王様……自分の父親に当たる人物との、SAN値がガリガリ削られるような会話である。


 息災であったか。……じゃねーよ!

 息災も何も、お前と会ったの──生まれたときを除けば多分──初めてだよ!

 というか、何?この、視線だけで人を殺せちゃうような冷酷な目は!

 怖いんですけど!

 この人が父親とか……ないわー。

 だって、この人私を物を見るような目で見てくるんだよ?

 うわ、怖い。

 目は心の何とやらって言うけど、この目は私を消耗品か何かとしか思っていない。

 その内、自分の不利益になると判断されたら即切り捨てられそう。

 まあ、それが上に立つ者のやり方かもだけど、私に刃を向けるんだったら許さない。

 ……許さないとは言いつつも、今の私にはこの人に勝てるビジョンは思い浮かばない。

 それ程までに、強い。

 だから、私は強くなる。


 ……おっと、挨拶しなきゃ。

 リサが青白い顔でこっちを見ている。

 何かごめん。

 だ、だって、さっきの謎の声で思考速度が上がったというか……体感時間が遅くなったというか……。

 わ、悪気は無かったんだよ?

 だからそんな「酷い!裏切り者!」みたいな顔しなくてもいいと思う。

 うぅ、そういえば私前世でコミュ障だったんだ。

 な、何て話せばいいの?


「態々おいで下さり有難う御座います。要件は何でしょうか。」


 ……え?


「構わぬ。要件は、先日の襲撃者についてだ。特徴なり何なり、見たことを全て話せ。」


「承知しました。まず、特徴はお下げ髪に瓶底眼鏡の……」


 え?

 何か私の口が勝手に動いて喋ってる!?

 え、何これ怖い。


 いや、そこのメイドさん!

 何滅茶苦茶吃驚した顔してるの!?

 私も滅茶苦茶吃驚してるけど!!

 傷つく!心外!

 私は早くスライムダンジョン(仮)に行きたいの!

 だから、そこの王様!早く帰ってくれーー!(心からの絶叫)

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