第7話囚われの姫(予定)と家庭教師④

──死ぬッ……!


 思わず目をつむりかけ、思い留まる。

 私は自分で強くなって生き延びると決めた!

 それを邪魔するヤツは神でも何でも薙ぎ払ってやる!

 そう、決意した。

 私は絶対に生きて見せる!


〔条件を満たしました。スキル【鋼の心-1】を獲得しました。〕


〔熟練度が一定に達しました。スキル【冷静沈着-1】がスキル【冷静沈着-2】に上がりました。〕


 何だか周りがすごくゆっくりだなぁ。

 ……思い返してみれば、何であんなに決意する時間があったんだろ。

 今この瞬間も含めて。


 ダガーの迫ってくる速さが前の比じゃないくらいに遅くなってる。


 取り合えず、これ以上考えるのは後だ。


 頭の中が再び冴え渡り、戦闘モード一色に染まった。

 先程よりも発射する魔法に込める魔力を出来る限り多くして、完成した魔法を射出する。

 ダガーが私に接触するよりも前に、エメライン襲撃者を仕留めるために、射出した魔法を出来る限り速くさせる。


 そして、その驚異的な威力の魔法はエメライン襲撃者に接触した──


──と思われた。


「!?……ッ!」


 ところがエメライン襲撃者は、それを当たらなければどうと言うことはない、と言うようにヒラリと躱し、窓を割って空中に踊り出した。


「なッ……!」


 慌てて追いかけようとするが、体が思ったように動かない。

 そう、まるで水の中にいるように、動きが鈍くなっている。


「待ッ……!」


 エメライン襲撃者はこちらを一瞥し、何やら杖を取り出して、風を起こした。

 どうやら風魔法のようである。

 グルグルと風が回転し、竜巻のようになりながら、男は消えた。

 それを見届けた途端、物凄い疲労感に襲われる。

 それと同時に、どっと気怠い感覚がし、床に崩れ落ちた。


「っ!姫様ッ!」


 リサがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

 何やらドタドタと騒がしい音も聞こえる。


 ああ、疲れたなぁ。

 ちょっとだけなら休んでもいい、よ……ね……。


 姫の意識はそこで途切れた。

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