第1話 囚われの姫(予定)と戦闘とトラウマ


───死にたくない


本を読みながら思った。


RPGゲームでは勇者が魔法と剣で魔王と戦う。


確かストーリーでは、フローラは氷魔法を使っていた。


“氷魔法は強くて、回復向けで、珍しい。しかし、魔王に抵抗するにはレベルと経験が足りなかった。”


って書いてあったし…


…鍛えれば強いのでは?


ワクワク…ゲームガチ勢の血が騒ぐ。ふふ、ふふふ。


「りさ、(森へ)さんぽしてくるね。」


「また城を散歩するのですか?なら、お付きの者を……?」


リサがそう言い切る前に、姫はリサの視界から消えていた。


ーーーーーーー


「はあ…はあ…」


姫の体は弱かった。それはもう弱かった。きっと外で運動していないからだろう。


「っ!」


──どさっ


走って3秒で倒れた。


よわっっっ!!!


私YOEEE!!!


まだ城から2メートルしか離れていないぞ!


5キロ走った気分だ。


ああ、お腹すいた。


ポテチが恋しい。


ポテテ〜!


そう思いながら歩いて森に入った。


「はあ…はあ…長い旅だった。」

↑(1キロ歩いただけ。)


城のすぐ近くに“魔の森”と呼ばれる森がある。


さわさわと風がそよぐ。


「!」



〔野生の スライム(Lv.1) が現れた!

▶逃げる

 戦う

 道具                〕




脳内に、そんな画面が表示された。


おっ、ゲームっぽい!と考えている内に、スライムが飛びかかってきた。


どうすればいいか分からないので取りあえず、戦う!と念じておく。


魔法は少しだけ使える。

……たぶん。


で、でも!


私には護身用のナイフがある!


「くっ!」


飛びかかってくるスライムを、力一杯ナイフで刺した。


ザシュッ!もう一回、ザシュッ!


スライムを倒した!

強敵だった。

↑(素手で倒せるくらい弱い。)




〔▶レベル が 1 上がった!     Lv.1→Lv.2          〕



何だか、動きが速くなった気がする。レベルが上がるって、こんな感じなんだな。


「つ、疲れた……。」



さっき自分が歩いてきた道を振り返って見る。そして、重大な事に気付いた。


「もしかして……ここからまたあるかなきゃいけないの!?」



前途多難な姫であった。


ーーーーーーーーーー


次の日、


「今日も魔物をぶっ殺す〜るんるんるん〜♪」


姫とは思えない謎の歌を歌いながら森に入った。


青い空が木々で隠れていく。


昨日、あまりにも遅く帰ってきた姫は、心配したリサに烈火の如く怒られたため、今日は絶対に早く帰ろうと決意したのだが……



「ここ、どこだ?ま、いっか。進もう!」

↑(迷った)


「あれ?ここさっき来たような…気のせいか。」

↑(迷ってる)


「あれ?日が暮れてきたぞ?」

↑(方向音痴)



ーーーーーーーーー



「ま、まさか!」


「迷った!!!?」

↑(今更)



……とりあえず、回れー右……



〔野生の ファイト・ボア(Lv.10) が現れた!

▶逃げる

 戦う

 道具                〕



……目の前に巨大な猪が現れた。


「あ、あはは…疲れてるのかな?幻覚が見えるよ。」



〔野生の ファイト・ボア(Lv.10) が現れた!

▶逃げる

 戦う

 道具                〕



まるで、早く決めやがれ!とばかりに、先ほどの画面が一回り大きくなって現れる。


「ブモォォォォ」


巨大な猪──ファイト・ボア──が後ろ足で地面をザッザッと蹴り、戦闘態勢に入っている。


あんな巨体で突進されたらひとたまりも無い。

顔からサアァァッと血の気が引いた。


「逃げる!逃げるぅぅぅ!!」


ーーーーーーーー


「やっと城に着いた…!!」


私は”ポテチ”と呟きながら死にものぐるいで逃げ帰ったのだった。


幸いにも、ファイト・ボアは直進しか出来ないため、泣きながら避けて帰った。城の近くには抗魔結界が張られていたので、そこまで来ればさすがに追ってこられないようだ。


こうして、転生初日の私の脳にトラウマが植え付けられたのだった。




今日も私は生き延びるーー!(泣)

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