第3話 サイコパス胎動3

翌日、父親という男に連れられ、長男が通っているという学園にやって来た。だが、私の年齢で入学するというのは問題無いのか?と思ったが、前例が無いわけではないらしい。

で、入学試験となった訳だが……私は魔法なるものは使えないのだが、そこのところ理解しているのだろうか?不安しかない。

まぁ、筆記試験に関しては問題ない。戦争の歴史やら貴族社会のマナーなんやら、読書や計算、所詮、ほとんどは暗記でどうとでも出来る。問題は実技というものだろう。なにやら教官が居て、模擬戦をするらしい。ふむ……戦闘は得意ではないし、命のやりとりがないなら興味がほぼ出ないのだが……。


「さて、どこからでも、魔法でも別に構わないが、魔法の場合は的当てをして貰う。話では、まだ魔法はまだ上手く出来ないという話だったが」

「……むしろ、其方からどうぞ?僕は無手で良いので」

「……子供の遊びではないぞ?」

「えぇ」


教官という人は学園長やら父親という男に目配せして、どうするかアイコンタクトを取っている。ふむ……隙が幾つか有るが、警戒はしてるようだ。ちょっと揺らいだり、半歩足を前に出せば警戒しているのがはっきり分かる。


「どうなっても知らないからな!」


教官という人は了承が得られたのか、やや呆れた顔をしつつ、私に視線を移し、木剣をきちんと構え、私に向かってなにやら言いながら、しっかり踏み込んで、木剣を振り上げ、斬りかかって来た。が


「かはっ!?」

「まだ、終わりじゃないですよね?」


相手の踏み込み、斬り込みに対して、こちらも踏み込みつつ、半身になり斬撃を回避、右手で相手の気道、まぁ、喉だけどを殴り、ついでに脊椎も狙っての飛び蹴り、ただ、今の私では身長が足らないからか、相手が左手を盾にして蹴りを受けたが、思った以上に吹き飛んだ。……なるほど、ダメージを後ろに跳んで和らげたようだ。


「子供にしてはえげつない攻撃だなぁ、おい」

「実力を見るのでしょう?」

「……ふぅ。十分だ。坊主は間違いなくこの学園でも通用する」


教官という人は構えを解いて私に模擬戦の終わりを告げ、喉を擦る。ふむ、多少ダメージを軽減されたが、やはり、右手に来た感覚通りに当たってはいたようだ。

そして、教官という人は学園長の方に行き、私は父親という男の方に向かう。何か驚いている様子だが……さて、向こうは。


「では、魔法に関しては……教師を着けましょう。しばらくは学園の寮と寮の庭で魔法の勉強をして貰い、ある程度覚えたら本格的に学園に通って学ぶとしましょうか」

「それが妥当かと。この年齢で入学等、良い顔をしないのが多いでしょうし……この子供に喧嘩を売って怪我を負った息子を見た貴族がうるさくなりそうですからね」

「あら?魔法戦なら分からないでしょう?それとも、魔法戦なのに肉弾戦をやる貴方レベルという事かしら?」

「少なくとも、続けてたら俺は負ける確率が高いですかね。剣と無手ですがこの子供……俺の持ってた木剣を取るのも狙ってました」

「なるほど。剣を奪われた剣士等弱いですからね。良いでしょう」

「まぁ、一番の理由は……戦闘を続けたくなくなるほど、嫌な気配がしたからですが。ありゃ、本当に人ですか?」

「何を言ってるの。教会の鑑定でも人と出てます。珍しく鑑定不明な物を持っていたようですが」

「……そうですか」


教官という人と学園長という人の話し合いは終わったようだ。私の方に2人して向かって来る。父親という男も落ち着いたのか、「後で従者を寄越す。必要な物はその者に伝えて、学園で不明な点は長男に聞くと良い」と言って去ってしまった。どうやら合格で間違いないらしい。というより、これから1人でどうしろと?


「では着いてきて下さい。とりあえず、簡単に学園と学生寮を案内します」

「……お願いします」


なるほど。多分、学園は血縁者だろうが部外者は基本的に立ち入り禁止か。で、私が勝手に動き回らないように教官が後ろに居て学園長と教官に挟まれた状態か……ほう、軽く様子を見たけど隙が無い。これでは興味本位で不意打ちは止めたほうが良いですね。

それから、学園の中を案内されたが特に何もなく、あっさりと最後に自分の部屋に案内された。

これで案内は終わり、と学園長達は去ったが、部屋の中には私以外に2人がまだ居る。というか居た。


「サイ様、私は本日付きでサイ様の従者になったエルと申します。此方はサイ様に魔法の扱い方を教えて下さる」

「初めまして。クリフ・リンブルフといいます。魔法については明日の昼から勉強を始めます。付き合いが短いか長いかは君次第ですが」

「サイ・アンサスです。よろしくお願いします」


学生服を着た知らない少女と魔法を教えてくれる教師だろう男……まぁ、男は挨拶をしたら帰ったが、私の従者という少女は何故かニコニコと私を見たままだ。というか、屋敷では見た事がないが……ふむ、どうでもいいか。

こうして、学園生活が始まるまでの間、エルに世話をされながら学園の授業についていくための勉強と魔法の練習の日々が始まったのだった。



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