第3.5話 サイコパス、感覚を取り戻す

学園生活が本格的に始まる前、勉強や魔法の練習(訓練)に明け暮れるなか、私は、この新しい魔法という力の使い方について考えていた。別に今までのやり方でも問題ないが、使えるならば利用しないという手は無い。

そして、ただ魔法を教えて訓練させて直ぐに帰るクリフはともかく、なにかと世話を焼こうとするエルの存在が問題だった。なんとしても私の後ろをついてまわり、軽い実験や狩りが全然出来ない。いや、正確には一応は出来ているのだが、エルの追尾を撒くのに時間がかかるのだ。それに、最近は撒くのも面倒なので、屋敷に居た時もやっていたような夜狩りしか出来ていない。たまにで良いから昼間も普通に狩りをしたい!

まぁ、夜間の方が割りと大型の夜行生物が森に居るので、前にチラッと昼間見た時には、こんな大型の獲物は見かけなかったのだが、逆に大型の獲物は狩りやすくてつまらない。どうせなら、昼間の時に、擬態している小さい獲物も狩ってみたいものだ。まぁ、夜でもこちらを見つけて襲ってくるタイプが弱いだけで、夜に動く草食や雑食タイプは気配を感じたら大抵逃げてしまうのが現状だ。


「ふむ……久しぶりに罠を作ってみたが、魔物も動物も掛かるやつは掛かるな」


今夜は前回、狩りをせずにひたすら罠を作って設置するだけにしたが、やはりあまり知性がない生き物は掛かりやすいな。まぁ、幾つか破壊された後も有るが、こちらは動物ではなく魔物だろう。一部、人間により壊されたと思われる罠や罠に掛かって死んでいる人間が居るが、全く問題はないな。森で罠に掛かる狩人なんて三流以下のバカだ。まぁ、無事な装備や使えそうな物は有り難く頂いていくがね。


「しかし、エルについては、早々に何か手を打たないと手に入れた物も部屋には持ち込めないし、隠さないと不味いな……ん?これは?……ほうほう……中は……ふむ、使えるな」


私はエルの対処を考えながら、足元を見た。魔法を教えてくれる男が言うには、魔力は毎日無くなるまで練れと言っていた。まぁ、よくは分からないが。なんとなくで、今も練ってはいる……練ってはいるが、問題はそこではない。今の所、一般的な魔法は教えてもらい、ある程度は出来てはいる。だが……自分の影に石が入っていき、消えた。そう、消えたのだ!これは使えるのでは?だが、今は偶然の産物。確実に、私が使いたい時に、使えるようにしなくては意味がない!多少、帰りが遅くなっても習得せねば。ふむ、となると……エルに対しての言い訳……いや、アレを試してみるか?うむ。楽しくなってきたな!今なら村1つ消しても問題無かろう。だが、近くに村はな……猟師小屋か?幸先が良いな♪

壁に隙間があったので覗いてみたが、暗くてよく見えず、そういえば、魔力というのを身体の1部に止まらせて溜め込み、身体能力を上げるという方法が有ると思い出し、早速実行してみるが、中が暗くてよく見えないままで、嘘や迷信を教えられたか?と思ったが、穴に指先を入れてみると布のような感触があった。どうやら、コートか遮光用に布をかけてるようだ。仕方なく、今度は壁に耳を当てて中で音がするか確認してみる。


「……反応無し、なら」

音がしないので、ちゃんと武装し、警戒しつつ小屋の中に入ると。

「……ヒハッ、やっぱり居た♪」

「…………ガキがこんな所になんのよう、だ?」

小屋の中には壁に背を預け、気配を消し、静かに休息を取っていたらしい男が居り、軽く問いかけられたので、私なりの挨拶をしてから問いかけに答えてあげた。

「もちろん、狩りだよ?」

「あ?……な……」

「ゆっくりおやすみ。ここの物は私が貰うから」


男は、腹にナイフが刺さり、戸惑う間に喉を裂かれ、頭を床に叩きつけられ、沈みゆく意識の中、疑問しか頭に浮かばなかった。

(こんな所に何故子供が?そして、革製とはいえ防具は着ていた筈なのに、子供相手にあっさり投げナイフごときで貫通された事、子供の動きとナイフ捌きが素人ではない事、何故に突然、子供に襲撃されて自分が死ななくてはいけないのか?それらが頭をぐるぐると回った。そして、俺の意識は子供の中に居る何かに吸い取られていった)


「さて、終わったか?やれやれ、服を汚してバレたら厄介だからな。楽しむのはしばらく先になるだろうな」


私は男が微動だにせず、亡くなったのを確認してから、小屋の中の物を全て影に仕舞った。どんな物でも獲物を狩ったり、生きていくには使える物しか無いからな……多分。

さて、少し長くなったが帰るか。明日からは、狩りよりもエルを何とかするのを優先しよう。フフフ……今から楽しみだ。




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