第2話 サイコパス胎動2

翌日、再び父と一緒に出掛けるが、前回とは違い、護衛の騎士やら冒険者と呼ばれる連中を雇って、食糧も数日分持っていくらしい。

で、王都に向かい、何処に行くのか、どういう用件なのかを父親という人物は教えてくれない。まぁ、尋ねてもいないが。私としては自分が住んでる街、王都の方向と街との距離、更に、屋敷から街を出る門までの距離、街を出て賊が襲ってきた場合と獣が襲ってきた場合、護衛の者達の強さ、獣の脅威度等……まぁ、こんなところだろうか?

「……あまり外を眺めるな。街中は良いが、街から出たら、矢等が飛んで来る場合もある」

「では、門を越えたら大人しく座ってます。しかし、何故王都に僕と父上だけ行くのですか?兄上や姉様は儀式の後、訓練に入ってたはずですが?僕に訓練は無いのですか?」

「……お前は頭が良い。そして昨日、良い才能が有るのも分かった。しかし、限界が分からなかった。なので、王都にある教会の本部で再度鑑定の儀をしてもらう。そして、長男と同じ学園の入学試験を受けてもらう」

「父上?……あの、一番上の兄上を家で見なくなったのは部屋でお勉強と稽古漬けになったのではないのですか?」

「は?……はっはっはっ!いやいや、長男は家を継ぐのと年齢的に王都の学園に入学しているだけだ。まぁ、たまに家で見かけるのは学園が休みで帰って来ただけだ。他の兄妹は地元の学園だがな。ただ、お前はそれなり以上に才があり、能力も有るのは先日に分かった。勉学の方も兄達に追い付いてしまってるしな。しかし、希に好奇心で出歩き、興味のままに動くのがたまに傷だが」

「父上、褒めるなら褒めるだけにして下さい。お説教は嫌です」

全く、多少の演技をする身にもなって欲しい……しかし、この父親という奴の言い分だと、このままでは計画に支障をきたすのは明白。さて、どうする?……ん?いや、能力の使い方や多少の武器の使い方は学園という所で教えてくれる、ということだろう。ならば、その学園とやらを卒業するまでは演技して、そして屋敷に戻ってから事に移れば良いのでは?ふむ……悪くない。むしろ良い。よし、計画を練り直して随時修正していこう。計画的にやるなんて、本来、私は得意ではないのだ。私と同じか似たような考えや思考を持つ奴を味方につけるのも良いかもしれない。うむ、ずっと1人で楽しくやるつもりだったが、共感出来る仲間が居るなら居た方が面白いだろう。死ぬ前に牢獄で会った連中にも、私に賛同してくれた者が居たし、あの時は初めて仲間が出来て人生で二番に楽しめた。一番はもちろん狩りをしてる時だけどな!


……旅は非常につまらなかった。道のりと方角を頭に叩き込むだけ、父親という男と他愛ない会話をし、何事も無く幾つかの村やら街やらを通り、数日かけてようやく王都に着いた。

「……」

「流石に王都の街並みや賑わいには驚いたようだな?」

「はい!凄く良い所ですね!」

「はっはっはっ、そうかそうか」

父親という男は私の反応を楽しそうに見るが、それはそうだろう。何と壊しがいがあり、殺戮し放題の場所か!興奮するなというのが無理な話である。これは計画を大幅に修正しなければならない。最初の街は私が産まれた街にしようと思ったが、止めだ。最初はここを蹂躙する事にした。そのための努力を怠りはしない。今まで以上に鍛錬をしなければ!

そして、馬車は目的地に着いたようで停車し、父親という男と一緒に馬車を降りると、権力を象徴するような大きく、立派な教会が目の前にあった。そういえば……前世のあの中途半端なのに世界遺産になった有名な教会は完成したのだろうか?

「ここで再度、鑑定の儀をしてもらう」

「早く行きましょう!」

私は内心ウキウキした気持ちで父親という男より先に教会の中に入り、周りを見渡した。前世の教会といえば一種の芸術作品のような建物が幾つかある。さぞ神聖なのだろうと期待したのだ。 それも、王都という場所、でかい建造物なら尚更である。

「……」

「どうした?急に立ち止まって。礼拝に来たわけではないので先に進むぞ?」

がっかりした。非常に残念である。でかさだけでの主張で、中はシンプル。いや、シンプルであるが故の良さが有るのも知ってはいるが、これはない。飾り気無し。でかい女神のような像が真正面にあるだけ。神聖さ?皆無。像に日の光が当たる設計でもなく、ステンドグラスも無し、椅子は普通、凝った彫りとか芸術品等無し。私の気分は最高潮から最低値へと急降下だ。黙って父親という男に着いていくしかない。

「その子が例の?」

「あぁ。よろしく頼みます」

神官らしい女性と父親という男が会話を進める。まぁ、1日以上の差はあったので、この教会に私の情報が入っているのは別に驚く事じゃない。むしろ驚くのは女性の神官の方だ。この世界は一部、実力主義な所が有るらしい。女性でも高位の神官になれるのだから。だからだろう。失言してしまった。

「才能もそうですが、貴女は沢山努力をしたんでしょうね」

「息子がすみませんっ!!」

と。言った瞬間には、父親という男は慌てて僕の頭を押さえ、無理やりお辞儀させ、謝罪をした。女性の神官はちょっと照れた様子だが、少し嬉しそうにして許してくれた。

私はよく思った事を言ってしまう癖がある。注意しなければ。それと、父親という男よ。子供の頭は大事に扱って欲しい。脳は繊細な器官なんだぞ?

「では、こちらに」

父親という男の手が頭から離れ、女性神官に案内されて教会の奥へと案内された。まぁ、ここまでは前回の儀式の時と同じだろう。

しかし、応接室らしい所に案内されたのは同じでも、そこから先は同じではなかった。

「今回は此方の鑑定石を使用します。この石盤に手を当てて下さい。それで貴方の能力を視ます」

「……えぇと、周りの人は?」

「もしもの時の兵士です」

嵌められた!?と一瞬思ったが私は子供だ。やりようは有るが……私の能力を視る?……嫌だな。まぁ、言われた通りにはするが……私の本性がバレるのは嫌だ。と、渋々石盤に手を当てると石盤が光り、何やら私から何かが石盤に流れるのが、不愉快である。

「もう良いですよ。さて、鑑定の結果を見てみましょうか」

もう良いのか、女性神官は石盤を手に取り、表示された内容を見て、私にも見えるように机の上に石盤を置いた。 内容は……


サイ・アンサス

6歳

内包魔力:極大

魔法属性:光、闇、混沌

適正武器:全て

スキル:

『ーーーー』『ーーーー』『ーーーー』『ーーーー』『ーーーー』『肉体強化』『魔力操作』『刀剣術』『格闘』『弓術』『馬術』『罠設置』『罠解除』『隠密』『俊敏』『光魔法』『闇魔法』『混沌魔法』『魔力付与』『思考加速』


「これは……読めないのは何でしょう?」

「私にも内容は分かりませんが、鑑定石で鑑定出来る範囲外のスキルという事でしょう。それよりも……6歳で既にこれだけの能力を持っているのが異常ですね。息子さんに特殊な訓練でも?」

「いえ、訓練も勉強も普通に他の子と同じ位です。まぁ、兄や姉に負けじと励んでいたのは知ってましたが……まさかそれ以外でも鍛錬をしてたのか?」

「……ダメでした?」

まぁ、バレてしまっては仕方ない。うん。私は兄や姉という人達と同じ訓練や教育は受けた。まぁ、同じ歳の頃と、という言葉をつける必要は有るが。物足りないので睡眠時間を少し削って鍛錬したり、日常生活でも負荷をかけるように心掛けた。おかげで前世の全盛期レベルには何故か仕上がったが、この世界ではかなり弱いという事が分かったので必要以上に鍛錬した。

しかし、真正面で真面目に戦えば私はまだまだだ。この部屋に居る兵士という連中に全く勝てる気がしない。なんなんだこいつら?化け物か?いや、この世界の人間が強すぎるのか?……鍛錬のレベルを更に上げないと計画に支障をきたすな。

「まぁ、危険は無いでしょうから大丈夫とは思います。息子さんをこれからどうするつもりですか?」

「かなり早いですが、長男と同じ学園に通わせようと考えてます」

「なるほど。見れる能力以外で学力も有るのですね?」

「えぇ。この後は宿に一泊して、明日には入学試験を受けさせるつもりです」

「まぁ、入学は大丈夫な能力は持っているでしょうが……大変では?」

「まぁ、そうですが……資金面はなんとかしますので大丈夫ですよ。子供の問題は子供の問題です。学園の中では」

「そうですね……貴殿方に神の祝福を」

「ありがとうございます。では」

「えぇ」

長ったらしい会話がようやく終わったようで、ついでに、ここでの用事も終わったらしい。父親という男が女性神官にお金を渡し、立ち上がると私を見てここの用事は終わりと、「行くぞ」と言ってきた。なので、私は椅子から立ち上がり父親という男の横に着く。

ちらり、と女性神官と兵士を見たが、私に何かする気配も様子もないので、父親という男と一緒に教会を後にする。その後は、高そうな宿に一泊した。

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