第1話 サイコパス胎動1
サイコパスが、この世界に産まれてから6年が経過した。産まれてからサイコパスはどうでもいい自分の名前、サイ・アンサスという名前だというのを一応は理解し、自分が一応は上級階級では下の方の家系と把握、次に自分の住んでいる屋敷の構造を把握、使用人の数、血の繋がった他人、もとい家族の数の掌握。そして、この世界の常識やら色々を勉強させられつつ、自分が欲しい技術と知識だけを強く求めて修練した。
一応、この世界には前の世界には無かった魔法というものが有るらしい。だが、生憎と基本的な属性魔法と呼べるものは自分は使えないようだ。どうでも良かったが、父親を名乗る男(実父)は、何か特殊なスキルというモノや魔法の属性が無いか教会で観てもらえるよう計画してるようだ。親や兄弟と呼ばれる存在達は何らかの属性魔法を持っているらしく、ないはずはない……という事らしい。
まぁ、心底どうでもいい。というか神なんぞ居るわけ……いや、居たな。邪神とか名乗ってた獲物が。殺った獲物の事なんて普通は覚えてないし、覚える気もないが、何故か覚えてる。……なるほど。つまり、この世界には神が存在するのか……殺りがいが有りそうだ。
そして、前回(前世)の失敗を糧に、サイコパスは入念に計画を練る。前回は無計画な所が有り、それが仇になったのだ。だが、今回はそれもあまり問題じゃない。高度な科学捜査が無いからだ。ただ、魔法による捜査は有るだろう。しかも、眉唾物では死者の声を聞くというオカルトじみた捜査も有るには有るらしい。
なので、知識と色々な物を壊す技術の向上をしつつ、自分に出来る可能な限りの事をこなす。ついでに、年相応の子供らしい演技もしておく。いやはや、子供の頃を思い出しながらの行動だが、不思議と何とかなるものだ。前回では気味悪がられたが、この世界ではただ子供がする事だと甘く見てくれる。
そして、ある日の夜、夕食を食べ終えた後、自室で勉強しながら訓練しようと考えていると、父親という男に後で書斎に来なさいと言われ、予定の変更を余儀なくされた。
「失礼します」
「あぁ、良く来たね。少し座って待ってなさい」
どうやら、まだ仕事か作業が残っているようだ。書斎に入るなり待つように言われてしまった。
しかし、隙だらけだ。まるで襲って下さい、という感じで背中を向けている。まぁ、使用人やら他の家族にも言えるが……正直、まだその時じゃないと、衝動を抑える身になって欲しい。ついつい気を抜いてしまったら、やってしまう自信しかない。まぁ、まだしない予定なんだけど。
「さて、待たせてすまなかったね」
「いえ、ただ身内とはいえ無防備過ぎませんか?」
「は?」
「あ、いえ。上流階級だと狙われる事もある、と門番の人から聞いたので」
「それは、お前が1人で屋敷から出ようとしたからだろう?」
「……すみません。それで何用ですか?」
やらかしてしまったと思ったが、上手く誤魔化せた。いや、誤魔化しじゃなくて事実だけども……しょうがなく、そこは謝り続きを促す。
「はぁ……まぁ、問題も起きてないし、反省しているならば良い。用件は勿論別だ。明日、教会に行って鑑定をして貰う。何かしら技能や属性が分かれば、お前も兄や姉と一緒に学ぶ時間が増えるだろう」
「私は別に、今のままでも特に困ってはませんよ?」
「まぁ、な。ただ、世間体というものも有るし、自分が何を出来るのか分かれば、将来の夢にも繋がるだろう?」
「はぁ。でも、今更ですか?」
「いや、一応は貴族であるからの特権だ。本来なら10歳か12歳。または成人の儀で知るのだ。むしろ速い方だよ」
「なるほど。そうだったんですね」
「なので、今日は早く寝ておきなさい」
「分かりました。では、失礼します」
用件は終わった。なので、僕は書斎を後にして自室に向かう。
まぁ、扱える魔法の属性やら何かしらの技能が分かる、ね。僕のやりたいことに役立つ物なら良いけど……ぶっちゃけ必要な物か?って聞かれると別に要らないってのが答えかな?やることは前回と変わらない訳だし。
とか考えながら自室に向かうと、先に父親から話を聞いていたらしい兄やら姉やらが待ち伏せしてた。知ってたけど……何か久しぶりに見た気分だ。というか、久しぶりに見た。弟や妹も居るけど、先に鑑定の儀を終えた兄弟はやることが増えて食事が別の時間って事がよく増えてたし、一番上の兄に至っては、家を継ぐための英才教育でほぼ缶詰。現に、待ち伏せには参加してない。
「おめでとう。これで私達の仲間入りね」
「明日はまだ良いけど。明後日からはキツいぜ?」
敵意はない。ただ、安心させるために待ち伏せしてたようだ。こっちを見て、笑顔で話しかけてきた。
「……ありがとうございます。ただ、別に緊張とかはしてないですよ?」
「はぁ、昔は一緒に寝る位可愛かったのに……」
「少しはこっちに気を使えっての。というか、気を張るなよ。一応、兄弟だろ?」
うん、やろうかな?……いや、今は止めておこう。うん。やれる事が増えるかもしれない鑑定の儀の前に、一家抹殺は止めとこう。まぁ、確かに一応は兄弟だ。一応は貴族で妾も居るしね、アレだ、第一夫人とか第二夫人とかの一夫多妻制度。だから、兄弟全員で今は……6人とか位。子沢山と言えば子沢山だけども、全員同じ親という訳じゃない。血の繋がりで言えば、姉と弟は僕と同じ母親だけど、兄2人と妹は別の母親だ。
「父上から、今日はもう寝るように言われたので」
「大丈夫?何か有ったら、怖ーいお兄ちゃんからお姉ちゃんが守ってあげるからね?」
「いやいやいや、何もしねーし。というか、したら父上からお説教食らうのが目に見えるのにするかよ」
「ふんっ、どうだか。それじゃあ、明日は頑張ってね。お姉ちゃんはいつまでも味方だからね」
「勝手に締め括るなよ。まぁ、気楽にな。マジで帰ってきてからが大変だからよ」
そう言って、2人は自分の部屋に向けて歩き出し……やっと解放された。衝動を抑える身に本当になって欲しい。しかし、良くも悪くも良い家族関係である。これは父親と母親達の手腕だろう。
さて、邪魔者が居なくなったので自室に入り、ようやく、自分のテリトリーに帰れた。いくら無自覚に情に訴えてきても、所詮僕は前回の世界で俗に言うサイコパスという人種だ。元から壊れてる。共感なんて出来ないし、所詮は他人。これから狩られるだろう獲物が、狩人に何を言っても分からない。
まぁ、私をよく見ている使用人の何人かは気づいているだろうか?……いや、どこまで僕が壊れているかは分からないだろう。多少の擬装は完璧だ。
翌日、朝食を早々に食べ終え、軽い身支度をして父親と共に家の馬車に乗り、街にある大きな教会へと向かう。まぁ、初めて公式に家の外に出れたので、周りの景色を見ながら教会への道順を頭に叩き込む。
「そんなに屋敷の外が気になるかい?」
「はい。他の人々の暮らしとか興味深いです」
「そうかそうか」
「所で……鑑定の儀で何もない結果の場合、私は勘当ですか?」
「は?……いいや、それはない。鑑定の儀で分かるのは先天的な力だ。だが、世の中には後天的に才能を開花させる者も居る。そんなに緊張する事でもない」
「……そうですか。それは良かったです」
なんて、私的には他愛ない会話をしていたつもりだが、父親的には私が言った事に結構驚いていたようだ。頭を撫でてきたりする……正直ウザい。
そんなこんなで教会に到着し、私は父親の後を追って中に入り、簡単に建物の構造やら障害物、利用出来そうな物を頭に叩き込んでいく。
そして、父親が神官らしい人物に軽い挨拶をして、神官らしい人物に鑑定の儀を行う場所へと案内される。
「では、まずは属性を診ましょうか……こちらの水晶を触って、水晶に意識を向けて下さい」
「分かりました」
神聖な場所なのだろう。どうでもいいけど。神官は水晶が置いてある台から水晶を取り、シスターが私の前に手を置きやすいように小さな台を置き、その上に水晶を置いてから軽く説明し、私は水晶に右手を当てて意識を水晶に向けた。
すると、水晶は光と闇が混じり合おうとして、反発しあうように輝き、ウザいと思った瞬間、水晶にひびが入り、そのひびが亀裂となり、亀裂から光とも闇とも取れるようで違う灰色の煙を吹き出し、割れるというより砂のように崩れてしまった。
「「……は?」」
それを見て、私以外の人間は何が起きたのか分からないという感じで、一言だけ発して固まっている。
「あの?私の属性はなんでしょう?」
仕方ないので、私は神官に向けて尋ねた。全く、職務があるならば、その職務を全うして欲しいものだ。私?私の職務は楽しく捕まらないように獲物を狩る以外は無い。
「あ……す、すみません。あまりに予想外の事が起きたので呆けてしまいました」
「い、いえ、私も何が起こったのか分かりませんが……息子は大丈夫なのでしょうか?」
「えぇ、まぁ……多分、大丈夫でしょう。似たような事例は有りますから」
「ほ、本当ですか?」
「はい。属性は恐らく光と闇の2属性。水晶が崩れたのは、魔力の許容範囲を越えたからでしょう。例え魔力を扱えなくても、どれくらいの量が有るのか、あの水晶は計れる使用になってましたから」
「光と……闇。更に、水晶が壊れる程の魔力量……ですか」
なにやら2人して冷や汗を流しながら、顔を付き合わして会話している。私としては正直どうでもいい。あ、シスターさんと目があったので笑顔を向けてみる……目を反らされたというより、顔の向きを変え、次の瞬間には立ち去ってしまって、違う人と代わってしまった。
「で、では、次は武器の選定を行います」
「武器の選定?」
「どの種類の武器が得意かをみる儀式です」
「どれが得意か?」
「えぇ。貴族より上の方が基本的に受ける儀式です。貴族より上の方は時に民を護るために戦う力が必要ですからね。得意な武器が分かれば無駄に不得意な武器での修練が必要無いですからね」
「……なるほど。ありがとうございます」
確かに一理有る。得意不得意が分かれば、鍛練する項目ややることが大幅に変わる。よく考えられたシステムである。私には関係無いが。
そして、神官に小さな武器庫のような所に案内された。なるほど、分かりやすく種類別されているみたいだ。
「気になる武器は有りますか?」
「んー……特には。ただ、ここの武器って全部何か薄く光ってて、光るの無くせませんか?」
「……なるほど。どれも可もなく不可もなく扱えるという事ですか……素晴らしいお子さんをお持ちですね!」
「出来れば内密に頼みます。帰るぞ」
「あ、はい。ありがとうございました」
神官は私の一言に口の端を引きつかせ、笑みを向けて父親に言い、父親は何かを神官に渡して言うと、ここでの用が終わったようだ。
「明日、王都に向かう」
……あれ?兄妹の話ではこれから何かが有るという話ではなかったのか?……まぁ、良いか
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