第50話 再び檻の中

   STEは7人まとめて留置場に入れられた。よく、街で喧嘩をしていて捕まる

  と、入れられるところである。

流星:「何が詐欺罪だ。ろくに説明もないし。」

涼:「俺たち、また檻の中に戻っちゃったな。なんか笑える。ははは。」

大樹:「あの時は生命の危機と、貞操の危機があったもんな。それに比べたら、今は

  余裕じゃないか?」

篤:「ああ、本当だ。あん時は怖かったもんなあ。あの時、お前たちが俺を守るって

  言ってくれたっけ。」

  篤はそう言うと、大樹と涼の肩を抱いた。

涼:「篤くん、覚えていてくれたんだ。へへ。」

大樹:「守るって言ったのは俺だぜ。」

篤:「分かってるよ、大樹。」

  篤は大樹の頭を撫でた。いつもしっかり者の大樹。普段、誰も頭を撫でたりしな

  い。

涼:「あー。」

  涼が大樹を指さしてニヤニヤと笑った。

大樹:「なんだよ。」

  大樹は口を尖らせた。大樹の顔は赤くなっていた。

   一方、大樹が「貞操の危機」と言った時、光輝がビクンと体をこわばらせてい

  た。光輝はかなり危険な状態まで行き、顔が腫れるほど叩かれたのだ。

流星:「光輝。」

  流星は、そんな光輝の肩をそっと抱き、手でポンポンと肩を叩いた。光輝は、流

  星の方へ寄りかかった。

光輝:「あの時、僕を助けようとして頑張ってくれたよね。」

  光輝が小声でそう言うと、

流星:「いや、あれは俺にとって、ものすごく苦い思い出だよ。結局みんなの命の為

  だからって、光輝を犠牲にする事になって。」

  流星は手をぎゅうっと握り締めた。

瑠偉:「ねえ、また脱走でもする?」

  瑠偉が急にそんな事を言った。

碧央:「あの時は、外に出たら誰もいなかったけど、今度は外に出れば東京の街だ

  ぜ。必ず人がいる。」

流星:「いやいや、あの時俺たちは人質だったから、人がいれば助けてくれただろう

  けど、今回は一応合法的に捕まっているんだ。誰も助けてくれないよ。」

碧央:「そっか。」

  ははは、と碧央は笑った。

大樹:「そもそも、ここから出るなんて無理だろ。」

篤:「また、歌でも披露しますよって?」

光輝:「ははは、案外いけるかもよ?何しろ、僕たちは世界のスターだからさ。はは

  は。」

メンバー:「あはははは。」


   だが、本当にそんな事になった。翌朝、留置場担当警察官から提案があったの

  だ。

担当官A:「あなたたちもお暇でしょうから、どうですか、あちらでダンスなど披露 

  していただくというのは。」

  STEメンバーたちは、鋭く目を見交わした。これは、ひょっとすると逃げるチャ

  ンスかもしれない。

流星:「そうですね、僕たちもここにじっとしているよりは、その方がありがたいで

  す。ぜひ、そうさせてください。」

担当官A:「よかった。それでは、どうぞ。」

  担当官は鍵を外し、STEを檻から出した。

担当官A:「あまり広い部屋はないのですが。」

  担当官に案内された先には、多少踊れるスペースがあり、窓もあって明るい部屋

  だった。そして、数人の担当官が後からその部屋にやってきた。1人がスマホを

  取り出す。

流星:「あの、本当にここでダンスを?」

担当官A:「お願いできますか?」

  すると、担当官たちが拍手をした。STEのメンバーはびっくり。さっきまで威圧

  感を感じていたが、急に彼らに親近感を覚える。この人達、フェローかな?と思

  い始める。

   7人は、急にスターの顔になった。最新曲をリクエストされ、ダンスの始まり

  の位置にそれぞれが付く。

   担当官のスマホから流れる曲に合わせ、ダンスパフォーマンスを披露した。担

  当官は男性ばかりだが、みな目をキラキラさせて見ていた。曲が終わると、歓声

  が上がった。

担当官B:「いやー、すごいです!本物を目の前で見させてもらえるなんて、夢みた

  いですよ。」

  感激して、はしゃいでいる。

STE:「ありがとうございます。」

  留置場に入れられていることも一時忘れ、STEはにこやかにお礼を述べた。そこ

  へ、どこからともなく歌が聞こえて来た。外から、アカペラで大勢の人が歌って

  いるような声が。

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