第44話 平和祈念コンサート
STEは南アフリカに入った。今年はここからツアーをスタートさせる。まずは
コンサート会場にて、入念な打ち合わせとリハーサルが行われた。リハーサルの
最中、流星は現場監督に何度も注意される場面があった。
現場監督:「ムーン、今のとこ、君だけ離れすぎだよ。」
流星:「はい、すみません。」
現場監督:「ムーン、まだ離れすぎだ。」
流星:「すみません。」
そこで、光輝が、
光輝:「流星くん、このターンの時、踏み出す一歩が大きいんだよ。そこに気を付け
れば大丈夫だよ。」
と、横からアドバイスした。
流星:「うん、分かった。」
それで、問題は解決した。その後、一度休憩に入った時に篤が光輝に歩み寄っ
た。
篤:「光輝、お前はプロだな。」
光輝:「え?何が?」
篤:「いろいろあっても、ちゃんと流星にアドバイスしてさ。仕事とプライベートは
分けるって、かっこいいじゃん。」
篤がそう言って、光輝の頭を撫でた。
光輝:「まあね。っていうか、いろいろって何だよ。何もないよ。」
篤:「そうかあ?」
篤は笑って去って行った。光輝は、今篤に撫でられた頭を自分でちょっと触っ
た。
光輝:「・・・キュンとしたか?・・・。」
そして、首を傾げた。
いよいよコンサートが始まった。たくさんのフェローたちが会場を埋め尽くしてい
る。数曲歌った後、ステージの真ん中でMCをした。
涼:「フェロー!」
フェロー:「キャー!!」
碧央:「ハロー!」
篤:「I’m coming!(帰って来たよー)」
フェロー:「オ・カ・エ・リー!」
瑠偉:「わーあ、感激だね!日本語だ!」
光輝:「サンキュー、フェロー!」
流星:「Thank you fellow! We are coming. We have been ~ %&#$。」
つまり、流星は英語でペラペラとしゃべった。
フェロー:「ワー!」
そして、再び音楽が流れ、STEが歌を歌い始めた。
コンサートも終盤にさしかかり、ステージからそれぞれ2,3人ずつに分かれ
てアリーナ席の間の通路へ入り、そこでダンスをした。光輝がダンスをしている
と、隣にあった照明器具がバチンと音を立て、火花を散らした。光輝はそれに気
づいていなかった。光輝のすぐ後ろにいた流星は、
流星:「光輝、危ない!」
と言って、光輝に覆いかぶさった。2人が倒れた所へ、照明器具が倒れて来た。
流星:「うわぁっ。」
流星が悲鳴を上げた。近くの客席からも悲鳴が上がる。
光輝:「流星くん!?」
スタッフが駆けつけてきて、照明器具をどかした。すると、流星の衣装の背中
に、黒く焼け焦げた跡が付いていた。
光輝:「大変だよ!早く冷やさなきゃ!」
流星:「大丈夫だ。ここで引っ込んだらフェローが心配するだろ。あと2曲で終わり
だから。」
光輝:「でも!」
流星:「平気だよ。ほら。」
流星はそう言って飛び跳ねて見せた。そうして、最後までコンサートをやり遂
げ、みな楽屋へ戻った。
内海:「流星!大丈夫か?怪我は?」
舞台袖にいた内海が、やっと引っ込んできた流星に飛びついた。そして、黒く焼
け焦げた跡のあるジャケットを脱がせた。すると、下に着ていたシャツも、焦げ
ていた。
内海:「これ、まさか皮膚にくっついてるんじゃないだろうね。」
内海の言う通りだった。服を脱ぐことが出来ず、流星はそのまま病院へ行ったの
だった。
STEメンバーとスタッフは、会場近くのホテルに泊まる事になっていた。そこ
へ病院から内海と流星が戻って来た。
瑠偉:「流星くん!大丈夫?」
流星:「ああ、何ともないよ。」
内海:「何ともなくはないぞ。これじゃ、あまり激しく踊れないんじゃないかな。」
流星:「俺のダンスなんて、どのみち大したことないからさ、問題ないよ。これが光
輝だったら大変だったよ。フェローたちは光輝のダンスを楽しみにしているんだ
からさ。」
篤:「自虐的だなあ、流星。でも、俺からも礼を言うよ。光輝を守ってくれてありが
とな。」
流星:「お前に礼を言われる筋合いはないぞ。」
ツンとして流星はそう言ってから、自分でぷっと噴き出した。みんなで何となく
笑う。
内海:「じゃあ、夕食にしよう。ああそうだ、これ。」
内海は持っていた袋を流星に渡した。
内海:「入浴後にこの薬を塗って、ラップした上から包帯を巻くんだぞ。と言って
も、自分で薬は塗れないな。必要な時に声を掛けなさい。」
流星:「はい。でも、誰か近くにいるメンバーにやってもらうので、大丈夫です。」
流星はそう言って、薬を受け取った。
食事を終え、みんなで何となくしゃべったり、ゲームしたりして過ごし、明日
の打合せをして解散という事になった。もっと前に自分の部屋へ行くメンバーが
いても良さそうなものだが、寝るギリギリまで7人で一緒にいるのがSTEであ
る。
流星:「よし、じゃあ解散。お休みー。」
メンバー:「お休みなさーい。」
流星:「ああ瑠偉、俺の背中に薬塗ってくれるか?」
瑠偉:「いいよ。」
その瞬間、碧央がキッと振り返った。何も言わないが、目で物を言っているよう
だ。なぜ瑠偉を選ぶのだ、と。
碧央:「流星くん、俺が塗るよ。」
流星:「え・・・ああ、そうか。悪いな。」
碧央:「あれ、瑠偉だと悪くないの?」
流星:「いや、そういうわけじゃないけど。」
3人の間に変な空気が流れている所へ、光輝がやって来た。
光輝:「碧央、瑠偉、僕がやるからいいよ。」
3人は光輝を見た。
光輝:「僕を助けて怪我したんだから、当然でしょ?」
碧央:「そうだな、光輝が世話をするのは当然だ。じゃあ、頼んだぞ。」
碧央はそう言って光輝の肩をポンと叩くと、瑠偉の腕を掴んで去って行った。
流星:「えっと、じゃあ、頼むよ。」
光輝:「うん。」
光輝は無表情で頷いた。
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