第40話 新たな局面

   アルバム作成が進み、後はレコーディングのみとなった頃、社長の植木がSTE

  のメンバーを集めた。

植木:「そろそろ、ボランティア活動したくならないか?」

涼:「おお!ボランティア、ずいぶんしてないですよね。やりましょうよ!」

大樹:「確かに、最近はコンサートで忙しかったからな。」

植木:「チャリティーコンサートも十分社会貢献なんだが、そろそろ原点に立ち返

  り、またボランティア活動をしてみるのもいいかなと思ってな。ただ、世界的ア

  イドルとなった君たちが、どんなボランティア活動をすべきなのか、分からない

  んだ。」

瑠偉:「原点に立ち返るって事は、またゴミ拾いとか、落書き消しとか・・・。」

光輝:「やりたい、やりたい!」

植木:「いやー、今はそれは無理だ。君たちがそんな事をしたら、人が殺到して相当

  地元に迷惑をかけてしまう。」

光輝:「そっかー。残念。」

篤:「それなら、人が来なくて困るところに俺たちが行けば・・・。」

碧央:「それだ。」

  碧央が篤を指さし、メンバーも一斉に篤を見る。

流星:「人手不足で困っているところへ、俺たちが行くってことか?」

  メンバーがうんうんと頷く。

植木:「人手不足か・・・。タンザニアでボランティアを統括している友人がいるん

  だが、なかなか人が集まらないと嘆いていたな。そういう所へ行って、ボランテ

  ィアをしている人たちを励ましたらどうだろうか。」

瑠偉:「ボランティアを励ますのも、ボランティアなんですか?俺たちも、一緒にボ

  ランティア活動をした方がいいのでは?」

植木:「まあ、それはそうなんだが・・・それほどボランティア活動にばかりに時間

  を費やすのもなあ。」

碧央:「何かを急いでやる必要はないと思いますよ。タンザニアにしばらくいて、そ

  れで人が集まって来るのであれば、いいわけでしょう?」

植木:「うーん。だが、世界中でお前たちが来るのを待っているファンがいるじゃな

  いか。テレビに出て欲しいと思っているファンもたくさんいるわけだし。」

大樹:「それなら、タンザニアからでも配信できますよ。僕思うんですけど、コンサ

  ートをやっても、結局一部の人しかチケットを手に入れる事は出来ないわけで、

  ほとんどのフェローは僕たちをテレビやネット上でしか見る事ができない。それ

  ならば、僕たちが世界のどこにいても、多くのフェローにとっては同じ事じゃな

  いのかな。」

篤:「大樹、いい事言うなあ。」

植木:「なるほど。本当に、お前たちは普通のアイドルじゃないなあ。」

碧央:「社長が、普通じゃないアイドルを作ったんじゃないですか。」

植木:「そうだったな。・・・そうだよ。俺たちは、仕事をたくさんして儲けような

  んて、これっぽっちも思ってはいないんだった。地球が今よりもっと良くなるよ

  うに、悪くなるのを防ぐように、活動していくんだった。よし、タンザニア行き

  を検討しよう。」

  そうして、STE、そう、Save The Earthの活動は、新たな局面を迎えたのであ

  る。


   多くのスタッフを東京に残し、STEと植木、内海と数人のスタッフで、アフリ

  カ大陸のタンザニアへ渡った。環境保全キャンププログラムに参加し、植樹など

  を行うのだ。

   当然、STEがタンザニアへ向かう事は大ニュースになり、日本を出発する時に

  は、空港が大混雑するくらいのフェローのお見送りがあった。だが、タンザニア

  に到着した時には、そうお迎えは多くない。そして、追いかけて来るフェロー

  も、流石に少ないのであった。

    キャンプへの道は楽ではなく、キャンプに参加して連れて行ってもらわなけ

  れば、独りで行く事などできない。本気でボランティア活動をしようという人で

  なければ、簡単にSTEを追いかけて来ることはできないのであった。

   それでも、今までよりもキャンプに参加する人は確実に増えた。そういったボ

  ランティア活動が注目を浴びたという事もあるし、本当にSTEが好きで、会える

  のを期待してやってきた人も、世界中から集まった。STEは植樹活動に時々参加

  をし、更にはタンザニアの子供たちと一緒にダンスをするなど、多岐に渡るボラ

  ンティア活動をした。

   住むところは、他のボランティアの人たちと同じでは、セキュリティーの面か

  ら問題があるとして、STEだけが住む家を用意してもらった。そこから自分たち

  で動画配信もし、新しい曲作りもした。もちろん歌やダンスのレッスンも。時に

  はテレビ出演にも応じたし、現地のマスメディアの取材にも応じた。

流星:「みなさーん!こんばんは、STEです。今、タンザニアでは夜ですが、東アジ

  アでは朝ですね?ヨーロッパではここと同じかな?」

光輝:「僕たちは、今日はタンザニアの子供たちと一緒に、ダンスをしましたよー!

  うん、僕たちだいぶ日に焼けましたね。」

一同:「アハハハハ。」

涼:「何しろ、日差しが強いですからね。」

篤:「顔だけ白いのは嫌なので、メイクもしない事にしましたー!」

  一同、手を叩いて笑う。

瑠偉:「篤くん、もう若くないんだから、日に焼けるとシミになりますよ。」

篤:「なにー!俺はまだ若いぞー。」

瑠偉:「いやいや、僕だって若くないです。二十歳を過ぎたら日焼けには気を付けな

  いと。」

大樹:「瑠偉は気を付けているのか?」

瑠偉:「帽子をかぶっています。」

大樹:「あー、それはみんなかぶっていますね。日焼け防止というより、日射病予防

  でね。」

涼:「そうそう、帽子は必須ですね。それでも顔が赤くなりますよ。」

一同:「だよねー。」

一同:「そうそう。」

  などなど、こうやって、自由に動画配信をした。

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