第29話 退院
碧央が退院した。それでも、松葉杖の生活だ。STEのメンバーは、次のコンサ
ートの準備に入っていた。
コンサートのために、新しい曲もいくつか作り、その振り付けもし、練習もし
なくてはならない。碧央は歌の練習には参加するが、振り付けの練習は見学だ
け。もちろん、体が回復したらその振りを覚えなければならないので、真剣に見
学をする。口出しもする。
そして、練習などが終わると、それぞれの部屋に帰る。そんな時、慣れない松
葉杖をついて移動する碧央は、人一倍時間がかかる。すると、必ず瑠偉が一緒に
付いて部屋まで送るのだった。
ある日、碧央が先に部屋に戻ると言って、瑠偉が送って行った後、リビングに
は、残りの5人のメンバーが残っていた。
涼:「やっぱり、瑠偉は碧央に負い目を感じているのかな。」
大樹:「ああ。あれだけ世話を焼いているのに、あまり2人で会話をしていない気が
する。」
光輝:「ということは、仲が悪くなっちゃったのかな?」
流星:「碧央は、瑠偉が1人で逃げた事なんて、気にしてないと思うんだけどな。」
篤:「瑠偉が勝手に負い目を感じているだけだとは思うけど、碧央もどうもなぁ。何
かあったのかなあ。」
涼:「ここは、俺たちが一肌脱ぐべきなんじゃない?」
光輝:「というと?」
涼:「あの時の話を聞き出すとか?」
大樹:「でもなあ。慎重にやった方がいいと思うぞ。心の傷に触れる事になるかもし
れない。みんなの前では話したくないかもしれないし。」
結局、どうすればいいのか、結論は出なかった。
一方、碧央の部屋へ行った2人。ドアの開け閉めを手伝った瑠偉は、松葉杖を
預かって立てかけた。碧央がベッドに腰かけると、
瑠偉:「じゃ、お休み。」
と言って、碧央に背中を向ける。
碧央:「おい、まだ帰るなよ。」
碧央が慌てて瑠偉の腕を掴む。瑠偉は振り返って、笑った。
瑠偉:「冗談だよ。まだ帰らないよ。」
碧央:「こいつは~。」
碧央はぐっと手を引き、瑠偉を隣に座らせた。勢いあまって2人して倒れる。
碧央・瑠偉:「わー、あははは。」
非常に楽しそうである。リビングで他のメンバーたちが心配している事など、全
く知らない2人。実に幸せな時間を過ごしているのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます