第7話 ボランティア活動

   次のボランティア活動の日、STEは新宿区にある商店街の、落書きを消すボラ

  ンティアに参加した。やはり早朝に集まって、軍手をはめ、マスクをし、それぞ

  れ布と薬品を持ってシャッターや壁の落書きを消して行った。例のおそろいTシ

  ャツを着て。

植木:「今日の課題は、挨拶を元気にしよう、だ。アイドルたるもの、挨拶ができな

  いといけない。大丈夫かな?」

篤:「はい!了解です!おはようございます!こんな感じですか?」

  篤は朝からテンションが高い。

植木:「そうだ!篤、いいぞ!他のみんなも、やってみよう!」

メンバー:「おはようございます!」

  意外に、みんな頑張った。

植木:「ん?瑠偉、言えたか?」

瑠偉:「おはようございます!」

植木:「よしよし。大樹は?」

大樹:「お、おはようございます!」

  ちょっと無理している大樹だった。だが、メンバーが「あはははは!」と明るく

  笑ったので、大樹のテンションも上がった。

   他のボランティアの人たちに加わる時に、メンバーみんなで「おはようござい

  ます!」と挨拶をした。落書きを消しながら、人が通ると「おはようございま

  す!」。

内海:「だんだんアイドルらしくなって来たな。」

  内海がこっそり植木に耳打ちした。


   平日にはデビュー曲の練習をし、ボランティア活動は隔週末に行った。次は群

  馬県の山に植樹のお手伝い。その次はハロウィンの翌朝の渋谷センター街のゴミ

  拾い。そして、その直後に季節外れの台風被害があり、次のボランティアは、そ

  の被災地でゴミの片付けを行った。

   被災地でのボランティアは、隔週と言わず、毎週土曜日に参加することにし

  た。そこには、若い人たちもたくさんボランティアに参加しに来るので、良い宣

  伝にもなると植木は考えた。

植木:「あの、うちの子たちはアイドルの卵なんですけど、避難所で何かお手伝いで

  きる事はありませんか?」

  植木が地元自治体に問い合わせると、それなら何か、避難者を愉しませるような

  催しをお願いしますと言われた。

植木:「喜べ!君たちの初のお披露目が決まったぞ!」

流星:「何ですか?」

植木:「避難所で、デビュー曲を披露する。」

光輝:「え、え、うそー。やばいやばい。」

篤:「なんだ、そりゃ。あはははは。」

  みんなも笑う。

光輝:「だってー、緊張するよぅ。」

  光輝が言うと、碧央と瑠偉もコクコクと頷いた。

涼:「大丈夫だよ。練習した通りにやればいいんだから。」

  ダンスを披露するのに慣れている涼は余裕である。けれど、歌を人前で歌うの

  は、みんな初めてだった。友達とカラオケに行く事くらいはあっても。

内海:「牧口先生によると、ステージで歌うっていうのは、カラオケとは全然違うら

  いしよ。緊張するし、歌詞が飛ぶ事もあるって。」

大樹:「怖い事言わないでくださいよー。」

内海:「とにかく、君たちはアイドルだから、まずはお愛想。歌は挑戦的だけど、そ

  の前と後は、良い子で可愛い子でいるんだよ。」

メンバー:「はーい。」

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