第2話 脅迫
マレーシアの日本大使館から、日本の政府官邸に連絡が入った。
外務大臣:「た、大変です、総理!大変な事が起きました!」
総理大臣:「どうしたの?」
外務大臣:「マレーシアから知らせがあって、あのSTEが誘拐されたそうです!」
総理大臣:「STE?」
外務大臣:「Save The Earthです!アイドルの!」
総理大臣:「な、なんだとー!?あのSTEがかぁ?!確かなのか?」
総理大臣が素っ頓狂な声を上げた。周りにいた秘書官たちも驚きでみな立ち上が
った。
外務大臣:「犯行声明がここに。」
外務大臣は息を切らせながら、手に握りしめていたUSBメモリを見せ、秘書官
の1人に渡した。秘書官がパソコンにそのUSBメモリを差し込み、中に収められ
ている動画を再生した。
― はっはっはっはっはー。我々はSTEを誘拐した。日本政府にとっては痛手で
あろう。我々の要求に従わなければ、24時間ごとにメンバーを1人ずつ殺す ―
総理大臣は、その映像を見てひっくり返りそうになり、秘書官に支えられて辛
うじて転倒を免れた。
STEを誘拐したのは、アメリカ第一主義をかかげるアメリカの極右団体
「Grate America」というグループ(むしろ軍隊)だった。彼らが日本政府に要
求した内容は、到底受け入れられるものではなかった。だが、STEは・・・
総理大臣:「彼らは国宝だ!我が国の、いや、世界の宝なのだ。1人でも欠けてはい
かん!どうしたらいいのだ!」
総理大臣も取り乱すはず。STEは今や世界中で人気を誇るアイドルグループであ
り、名前の通り、地球をも救う尊い存在なのである。
外務大臣:「しかし、彼らの要求に従うわけには・・・。」
総理大臣:「分かっておる!何としても、24時間以内に彼らを見つけ出し、救出す
るのだ!金はいくらかかってもかまわん。そうだ、防衛大臣を呼んでくれ。それ
から、君、アメリカ大使館に連絡してくれ。場合によっては私がアメリカ大統領
と直接話す。」
防衛大臣を呼ぶようにと言ったのは、秘書官に向けてである。すぐに防衛大臣が
かけつけてきた。
防衛大臣:「お呼びでしょうか。」
総理大臣:「困ったことになったのだ。あの、STEがマレーシアで誘拐された。24
時間以内に救出しないと、彼らの命が危ないのだ。まず、どこにいるのか、何と
しても見つけなければならない。マレーシアとも連携して、早急に対処してく
れ!」
防衛大臣:「な、なんですと!我が国の宝が、誘拐された?!」
総理大臣:「そうだ、これを見てくれ。」
総理大臣は、先程見た犯行声明を防衛大臣にも見せた。
防衛大臣:「な、な、何ということ!そんな要求は到底飲めません。だがしかし、
STEのメンバーを殺すですと!とんでもない。すぐに見つけ出します!」
総理大臣:「頼んだぞ。」
防衛大臣:「はい!では、失礼します。」
防衛大臣は足早に去って行った。
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