孝子とカブ少年
「こんばんわ。故障ですか?」
社会人一年目ともなると私のような性格でもストレスが溜まる時がある。それとも私のような性格だからか?
明日は休み。ちょいと夜走りでもと思いドカを押し、歩き始めたところで一階に住むシンママさんの息子に話しかけられた。これが道の駅で話しかけてくる騎士団なんかだったらド無視決め込むんだけどさ、同じアパートの住民だと流石にそうはいかないじゃん?
「やさ、ここでエンジン掛けたら近所迷惑じゃん?」
「新聞配達のバイクなんか夜中の二時とかに普通に走ってるじゃないですか?」
「や、あれは働くバイクだし、こっちのはマフラー換わってるしちょっとそういうレベルじゃないんだよね。きみは? こんな遅くまでバイト?」
「残業です」
「お疲れちゃん」
最低限の愛想は振りまいたし長話する気もさらさらない。軽く手を振ってその場を後にした。
交通量の多い道路まで出てエンジンをかける。一服と暖気をしながらさっきの少年の言葉を思い出していた。
(残業……ね)
つか、幼い見た目から中学生かせいぜい高校生くらいだと思っていたが社会人だったのか。ちょいガキ扱いした口調になっちゃってたな、
暖気を終え、行き先もなにも決めてなかったのでふらふらと都内を走っていたが、少年の所為なのかなんなのか、ふと高校の頃のことが懐かしく思い出された。
(久しぶりに
目に飛び込んでくる懐かしい景色が、高校時代に原付や
ノスタルジーに浸りながら小一時間横浜の街を流すと仕事のストレスもすっかりと消え去っていた。いい気分を維持したままベッドにダイブしたかったので第三京浜で帰路についたが、この日のこの選択は間違いだった。せっかくの良い気分がダサい格好のアメリカンに追い抜かれて台無しに。
(ありゃなんだったんだ? いくら暗いとはいえディアベルじゃないっつーのはわかったけど……)
ベッドの中であれこれ考え、悶々として寝付けなくなる。起き上がって冷蔵庫に向かう。ハーフボトルのワインを開けて胃に流し込む。
明日は気分転換と暇潰しも兼ねてダチのバイト先でも冷やかしに行くかぁ。
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