Colors of Biker 〜珍しい客 顛末記!〜
お店宛に謎の国際便が届いた。
エアークッションでぐるぐる巻きにされた荷物。宛名の近くにマジックで「from M dear」とだけメッセージが書かれていた。うっすらと透けて見えるその柄と形からそれがキャプテンアメリカ号のタンクで、あの外国人
せっかくならと、千宏ちゃんを通じて彼氏さんに連絡を取ってもらい、お店で一緒に開封することにした。今度は二台のハーレーがVツインサウンドを響かせて無事到着した。彼氏さんにはエムの存在は伏せていたので、
そうして三人でワクテカしながら開けてみたのだ。
……が。梱包材の中からお目見えしたのは、想像を絶する状態のオンボロタンク。銃弾で開けられた穴こそなかったが、溶接の継ぎ目付近には錆で穴が空いている箇所も見受けられた。
「……せっかくだけど、色々とご迷惑も掛けてしまいましたし、探すのも手伝って頂いたのでこのタンクはお店に差し上げます」と、粗大ゴミの引き取りを言葉巧みに拒否する彼氏さん。
よく考えれば、今日ハーレーに乗ってきている訳だから新しいタンクは既に付いてるってことだもんね。
「これからはキャプテンアメリカ号仕様とか拘らずに自分色にカスタムすることに決めたんです」と言う。
「いいと思いますよ! もちろん、レプリカ作るのも自分仕様もどっちもですけどね」
折角なので外に停められたバイクを三人で見に行く。その磨かれた鉄素地色のタンクにはトランプのイラストとメキシカンスカルのイラストが描かれていた。
「ハハハ……」
ネットでの炎上や現場検証等々、ここん所本当に色々あった。その締めくくり、ご褒美がこんなボロボロのガソリンタンクひとつだなんて……。
店を閉めた後そんなことを思いながら、一人オンボロタンクを眺めていた。
「それにしてもボロボロ。コレ錆びてないところも焦げた跡あるし。放火でもされたんじゃ……って、まさか⁈ ……んな訳ないか」
一部焼け焦げたボロボロの星条旗柄ガソリンタンクを酒棚上の空きスペースに鎮座させる。
タバコを咥え、ジッポーで火を点ける。
スマホを店内スピーカーに
〝Colors of Biker〟にまた一つ無駄な装飾品が増えた。
―K35―
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます