Colors of Biker 〜偶然 or 必然〜
――店を開けてすぐに光ちゃんがシフトに入ってくれた日曜日。
お昼時のラッシュを終えた後、三時のおやつ前にはお客さんもNinja400にタンデムでやって来たカップルのみになっていた。
初めて見る顔だったが、私と洋子がバイク乗りで、二人とも大型バイクに乗っているんだと男の子が話す。
うちはあまり宣伝のような事をしていない。もしかしたら常連の誰かから話を聞いてご来店して頂いたのかも知れない。
そうすると、こちらが聞いたわけでもないのに彼女が私たちに話した事によると、彼女もバイク乗りなんだそうだ。ホンダのCB
しかし今日はZX何とかの彼の後ろに乗ってきている。入店当初から、まぁ私や洋子とは違うタイプの女性だなとは思っていたけど、それがこれから起こる偶然に繋がるとは微塵も思っていなかった。そう奴が来るまでは。
駐輪スペースに、合コン翌日でもないのに珍しくV-MAXが止まった。因みに、私が何でダイサンの合コンの予定を把握しているかと言うと、聞きもしないのに毎回ご丁寧にLINEを送ってくるからだ。当然既読スルー、冒頭の三文字でわかる時などは未読スルー。
さて、同じ看板を背負っている身内とはいえ一応お客様。いらっしゃいと声を掛けようとした時、誰よりも早くキャピ女が声を上げた。
「あれっ? ウソヤダ? ちょっと待って! 信哉さん? えー、すごい偶然! なんでLINE返事くれないんですかー?」そのピーキーな声は、タンデムで連れてきてくれた青年の話が途中だと言うのに、ダイサンに向けて投げかけられた。ここで二人はカップルではないのかな? と下方修正する、
私と洋子は顔を見合わせ、光ちゃんは空のお盆を持ったままポカンと口を開けて固まっている。
「ちょちょっ、ちょっと待って!」
今度は光ちゃん。なんで若い女子はとりあえず待たすのか? 光ちゃんの発言を聞きながら老兵の二人はただただ成り行きを見守った。
こっから先の光ちゃんの
さて。盗み聞きするつもりがあった訳ではあるんだけど。彼女が一緒に来たNinja400の彼とはSNSで知り合って、今日初めて会ったそうだ。まぁその彼も用事があるとかで光ちゃんと彼女が話し込んでいる最中に自分の分の会計だけ済ませて途中で帰っちゃた訳だが。
同じく早々に珈琲一杯で知り合い(?)の女の子の分も一緒に払って逃げるように帰っていったダイサンとは、一ヶ月程前に友達に無理やり誘われた(という彼女なりの設定の)合コンで会ったらしく、猛然とアタックするも暖簾に腕押し状態だったとか。
「いや、ダイサンさん狙いって。お姉さんもマニアックですね」いや、光ちゃん。少しは歯に衣着せようか。
「え、何言ってんの? ダイサンさん話面白いし気遣いも凄いし一番人気だったよ!」
「えーっ⁈」私と光ちゃん、そして興味無さそうに聞いていないフリをしていた洋子もハモった。
「私誘ってくれた友達もずっとアプローチしてたみたいだけど結局諦めたって言ってたし」
「何ソレー! ダイサンさん高望みしてんの? サイテー」
「違うとおもうよ。その娘に聞いたんだけど。何かずっと好きな人いてぇ、気を引く為に合コン行ってるって噂だよ。あくまで噂だけど」
光ちゃんや洋子は意外そうな表情をしているけど、この娘やその友達の気持ちはわからなくもない。
ダイサンとは長い付き合いだ。あいつは私たちの前ではカッコつけ過ぎていて何処か自分を出し切れてないような気もしていた。
「お姉さん、今度は自分のバイクで来てよ。ダイ……信哉も偶に顔出すからさ」
「えー! 来る来る!」
元気のいい返事を聞き、ダイサンには悪いけど面白くなりそうだなとほくそ笑んだ。
―K35―
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