Colors of Biker 〜延命〜
――大学時代からのダチ、
「あー、初めまして。久地宗則です。キョウとは大学のサークルの仲間で」
「初めまして、宗則さん。
「ちょっ、
お昼時の来客ラッシュを過ぎた頃合いを見計らって始めたバイク談義のメインテーマは延命。
まずはメインハーネスの話になる訳だけど。
結論、宗則の話ではほぼ純正品と同じかそれ以上のクォリティで製作してくれるショップがあるとの事だ。だけどやはり費用はそれなり以上にかかってしまうと。
当然手順もそれなりに掛かる。まずショップに純正のハーネスをサンプルとして提供してからの見積もりになるし、そのサンプルは勿論返ってこない。で、過去事例から推測すると新品で購入するよりも二倍くらいの値段は想定しておいた方が良いという。
そしていざ電装だけの話に絞ってみても、乗り続けていく為に必要な配線はそれだけではない。エンジン内部の点火タイミングを知らせるピックアップコイルや発電用のジェネレーターからも延びているし、そして配線だけでなく点火を制御する
比較的に配線の組替えで、他車種から流用が可能なハンドルスイッチ周りにしたって純正品と同じ操作感や見た目に
彼女の愛車は洋子の
彼女は宗則の話を食い入る様に聞いていた。
例えば車体周り、足回りに関しては余程のマイナー車種で無ければ消耗品も心配はいらない。外装の修理に関しても対応可能なショップは多い。
〝乗り続けること〟
こうして宗則の話を聞いているとバイクも人間と同じ生き物なんじゃないかって錯覚に
「もし治るなら、出来る限りのことはしたいかも」
それが今日彼女の出した答えだった。
その言葉と覚悟を受け止めた宗則も「今後も何かあったら遠慮なく」と言って花崗さんとLINE交換していた。
その様子を微笑んで見つめる私は、宗則がことバイクに関しては協力を惜しまない人間だってのはもう何年も前から知っている。
こんなにいい奴なのに、私の知る限り学生時代にちょっとだけ付き合っていた彼女がいただけで他に浮いた話はない。顔だって(ちょっと、……いやかなり、濃いだけで)悪くはない、どちらかというとハンサムな筈。
そんな宗則がずっとフリー。世の女性は本当に男を見る目がない、私も含めて。
ランチタイムが落ち着いた後の会合だったけど、彼女の答えが出る頃には、外はもう夕暮れ時になっていた。
宗則と花崗さんに私特製のハンバーガーとキンキンに冷えたコーラを出す。
「え、キョウさん頼んでないですよこれ?」
「私からの奢りです。今日は洋子がいないから美味しい珈琲は出せないけど」
―K36―
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