Ride on Summer
ネットで見つけた掘り出し物が偶々近場のお店の出品商品だった。
バイト休みの日にニンジャで敵地に向かう。いや嘘々。
目的地の中古部品屋さんがあるのは某大手バイク用品店内。今じゃライバル視してるけど、学生の頃はそれはそれはお世話になりました。タダでさえ狭いバイク業界、しかも私はタダのバイトなんです。謙虚に生きねば。
イマイチ自分のニンジャにつくかどうか自信はなかったけど、ニンジャ用と思われるカスタム部品が車種不明の格安で出品されていたので急いで購入手続き。店舗受取にして期日を過ぎる一日前に取りに行った。
そこそこの距離はあったけど、何とか熱中症にならずに到着。まずは作業ピットが見える素敵な場所で水分補給。
はやる気持ちを抑えながらゆっくりと飲んでいたつもりだったけどすぐに飲み干してしまった。
商品を受け取って、軽いお約束的な説明を受けてパーツをカバンにしまう。
折角なのでライバル店の品揃えなんかをチェックしてから表へ出た。
帰り道、背中から刺す太陽の熱視線がジリジリと私のジーンズを焼いていく。
「これ絶対エンジン熱じゃないじゃない……」信号待ちで水温計と睨めっこ。
下ろし立てのジーンズの濃い藍色が熱を集める。脊椎パッドが背汗を吸って重くなっていく気がする。ヘルメットの頬パッドも汗を吸って張り付く。
そんな全てが、そんな一つ一つの不快感がまた夏が来たと私に伝えてくる。
暑い。暑すぎて笑みがこぼれる。
汗だくになって脱ぎにくくなる上着を脱ぐ時だって、ヘルメットを被り直す時だって、いつも悪態ついちゃうけど、それでも全部
夏の全部が好きではないけど、だからといって嫌いでもない。
真夏の道路を走りながら、そんなことを考えていた。
私がこんな詩的な気持ちになるなんて絶対熱中症だ。
すぐコンビニに入ってアイスを食べた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます