Hard Dayz Midnight
五連
平日だというのにやたらとお客さんの多い一日だった。
バイトが終わって家に着いたら、部屋の明かりも点けずライダースを脱いでそのままベッドにダイブ。それでも薄れゆく意識の中、かろうじてスマホのアラームを30分後にセットした私を誰か褒めて。
エキゾーストパイプの粗熱が取れて、バイクカバーを掛けられるようになるまでの時間、約30分。
バイト先イチオシの透湿防水バイクカバーは、熱でも溶けないって謳ってはいるんだけど何となく信じきれなくって。マイルールでエンジンを止めてから30分後にカバーを掛ける事にしてる。
でもアラームで起きられないと意味ないよね……。
少し肌寒さを感じて目を覚ました私に、窓の外を覆う
何でアラーム鳴らなかったんだ? あと今は何時?
二つの疑問を晴らすべく、まずスマホを探した。
ベッド下で見つけたスマホを見て、すぐに一つ目の疑問の答えが出た。
アラームが延々と鳴っていたにも関わらず、いつまでも起きない私の所為でスマホの充電は切れていた。
続いて二つ目の疑問の答えを求めて暗闇の中を灯りのスイッチ目指して歩く。
どこにも足先の小指をぶつけることなく、無事スイッチを点ける。
蛍光灯の光が眼球の奥に刺激を与えて、少し
「あっちゃあ。今日終わってるよ……」
休み前の貴重な夜遊びの時間がいつの間にか終わりを告げていた。遊び足りない子供のような面持ちでスマホに充電ケーブルを差し込む。
バイクにカバーを掛けに行こうとパーカーを羽織ったけど、ふむと考えてパーカーを脱いでライダースに袖を通す。こんな夜更けに幸いにも飲酒をしていない!
奇跡よね。バイクの神様がここで寝る運命ではないって言ってるよ絶対。
そういえばバイクの神様って誰だろう、本田宗一郎? 私的にはカワサキの創業者をあがめた方が良いのかな。今度名前調べとこう。
慎重に静かに玄関ドアを施錠し、メットを被ってニンジャを押して歩く。シールドは上げたまま、ライダースのフロントジップは全開、エンジニアブーツの重い足取りで愛機と共に歩む。
夜風は涼しいけどライダースを貫く程ではなくって、汗を掻き始めた脇から雫が垂れる前に手を突っ込んでTシャツの生地で
大きめの道路に着いたら路肩にニンジャを停めてエンジンを掛けた。
ニンジャに跨ってスマホの地図アプリを立ち上げ目的地を入力する。
ニンジャを押しているうちにぼんやりと思いついていたのは、以前洋子とライダーズカフェについて調べていた頃に見つけて気になっていた、深夜まで開いている
流石東京。深夜にカフェでコーヒー飲めるんだよ。
そしてGoogle先生が弾き出した所用時間は下道で一時間半、上道で一時間。
流石東京。山や海岸の方が近い田舎者には遠いね。
コーヒーを飲みに行く為に高速料金を払うという行為に少しだけ抵抗があったけど、間に合わなくって閉店後に到着した時の自分のテンションをシミュレーションして吹っ切れた。
……それに私の場合下道だと道に迷わないとも限らないからね。
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