野蛮なれ。

(注:本文中にネタバレを含みます)


 食事を終えて一緒に洗い物を済ます。

 布巾を取ろうとしたとき洋子と手と手が触れ合う。条件反射でお互いにゴメンと言い合うが、見つめ合いどちらからでもなく目を閉じて、唇と舌の感触のみに全神経を集中する。


「洋子」手を引っ張っていきリビングのベッドに押し倒す。

「強引」と言いながら自分で着ているシャツのボタンをひとつずつ外していく洋子。

 彼女がシャツを脱ぎ終わるのを待てずに、彼女のジーンズと下着を纏めてずらしていく。


 よくタチだネコだと聞くことがあるが、そもそもなんで男との行為の基準に従わなければならないのか。私たちには猫も舘も攻めも受けもない。

 顔を近づけ、彼女のふわっとした体毛を鼻で掻き分けながら、愛おしくやさしいキスをする。

「んっ」と洋子が小さく呻くと、潤いとともにゴムの匂いがした。

 萎えもしないし萠えもしないけど、口から指に交代シフトして洋子を激しく愛でる。

「ちょ、やさしく……」口答えする口にキスをした。


 行為後、お互いにどっちの汗かわからない程に湿った身体が乾く位の間、いつの間にか二人うたた寝をしていた。

 ほぼ同時に幸せな仮眠から目覚め、肩を寄せて一枚のタオルケットにくるまる。今日はそのまま二人裸でDVDを観始めた。


 冒頭の寸劇からバイクの走行シーンに入っていくと、有名なテーマソングがスタッフロールを連れてやってくる。

 生まれながらにワイルドだ? これを『行こう』なんて日本語にするセンスには脱帽だ。


「君が怖いんじゃない、みんな君が象徴している〝自由〟が怖いのさ」


 バイクに乗っていると一度は聞いたことがある、そんな有名な台詞が所々に出てくる。

 全ての走行シーンが音楽に併せて流れていく。

 主人公たちは出会う人々の生き方や自分たちに対する態度から哲学的な想いを馳せていく。突然やってくるラストシーンもバイクに乗ったままだ。まさに人生はバイクと共にある、そんな映画だった。


「兎に角、カッコいいよね」小並感だが私。

「これ、主人公たちってよりは周りが勝手に騒いでるだけじゃない?」と洋子。

「そう?」

「主人公たちはもう最初から生き方を選択してる、答えを知っているように感じたよ」

「言われてみるとそうかも」


 今私たちが感じた感想はきっと正解だ。

 同じ年代のまた違う個性が同じ映画を観たなら違った感想が聞けるかもしれない。それもきっと正解。

 何年もバイクに乗り続けた後、その時にまたこの映画を観て見たい。その時の私も(バイクに乗っている限り)きっとまた正解を出す筈だ。


 時代を超えて主人公たちが私たちに伝える。

 自由は手に入れるものじゃない! 我々こそが自由そのもの! 常識をかなぐり捨てろ!

 バイク乗りよ、野蛮なれ!ワイルドで行こう


 次は何を観ようかな。

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