第2話 水のおくすり~王都パレス~(2)
私は元々、戦いで両親を亡くした子供、いわゆる孤児だ。
街には戦災孤児たちが溢れていた。
戦争はほぼ終わった。平和な時代に向かうのは、私たちも薄々、分かっていた。
だから、この孤児の中から抜け出すために、みんなそれぞれ必死に働いて、勉強をしていた。
私も逆境に向かった。
何でも大人の手伝いをこなし、その日もらったお金でパンと難しそうな本を買った。
本を読みこみ、しっかり分かるまで、大変だった。
私が質問した町のおじさんが、長老さんを紹介してくれて、それでも分からないことを若い学者さんに、って繰り返していった。
この質問の終着点が、お師匠だったわけだ。お師匠はこの国で一番頭が良いらしい。
そのお師匠の弟子になった私は、妙に大人っぽい話し方と、妙に手先が器用になった。
ついでに、へなちょこな魔法を使うようになったのだ。
むせ返るような夏の臭い。そして日差しと、虫の鳴き声。
徐々に、夏の暑さが肌に戻る。
まとわりつくローブの重さ。私は橋の手すりを強く握っていた。
泣きそうな顔を私はしていたのだろう。お師匠は帽子を取って、私の小さい頭、金髪跳ね髪を優しくなでた。
何だか飼い猫のようだ。私はいつお師匠の使い魔になったんだ。
嫌そうな猫目を私がしていたのか。
お師匠は小さく苦笑いをした。
「正直、俺が魔法薬を教えることはもうないくらいなんだよねぇ」
「じゃあ、一人前じゃないですか」
「魔法を使えるようになろう?」
「身にあまる力はいりません。おくすりの知識と技術で、私はじゅうぶんです」
川面でなく、今度はちゃんとお師匠の目を見て話す。私の青い瞳にお師匠がしっかり映っている。
中途半端な態度は止めた。でも、まだ言葉では反抗中。
私の欠点は、心を許したお師匠にですら、頑固になってしまうことだ。
年頃の女の子としては、全く可愛らしさがない。
そうそう。
魔法の使い方にも、私の柔軟性のなさが出ている。
お師匠に命じられた、水汲みがあった。
私は何度も行っては戻るのが面倒くさかった。それにどんなに頭が良くても、非力な少女の身体であるのに間違いない。
バケツに魔法をかけて、行き来するようにした。
水はどんどん、壺に貯まる。これは天才な発明をしたと思った。
現実からしっぺ返しされる。
私はバケツ作業を止める魔法を知らなかった。
だから、壺から水は溢れて、部屋が水浸し。さらに焦った私は、動くバケツに魔法の杖で穴をあけて、一面水浸しが拍車した。
お師匠が駆け付けて、バケツは動きを止めた。
私は頭を軽く小突かれた。
ひどく怒られると思って目を閉じていたけど、その日にそれ以上の厳しい指導はなかった。
次の日から、魔法の訓練が一層厳しくなった。
疲れて私が集中を切らすと、魔法の力は大きくなりすぎた。
爆発。
油断しないで集中するように、とお師匠に言われる。
難しい本はページの関係上、読み終わりがある。
でも、魔法の訓練は終わりがない。結果、私は魔法が大嫌いになった。
その衝動で、お師匠が教えてくれた魔法薬の調合の訓練に、私は熱中した。
だいたいのおくすりは作れるようになった。
大人の魔法使いが作ったおくすりと同じくらいの効果があるそうだ。
それは良かった。私は照れて笑った。
それでも、魔法の訓練は続く。
お師匠が逃げ出した私を捕まえに来るのには理由があった。
最終手段で魔法を私が使うとき、その技の調整に困らないために、ちゃんと訓練してほしいのだ。
でも、その機会はいつ来るのだろうか。
石頭な私には、すぐやってくる冒険の日々が予想できなかった。
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