第47話 出発!
「わかった。諸々の確認が済んだら連絡してくれるか。」
「はい。」
今からリオレッドに行ってくることを報告すると、ラルフさんは力強く言ってくれた。今回も子どもたちを置いていくことになる。状況を確認したらすぐに帰らないとなと思っていると、ラルフさんは「それでだ」と話を続けた。
「もし状況が安定していたら子どもたちを連れて、俺がリオレッドに行くよ。」
「そ、それは…。」
ラルフさんが直接?!それに子どもたちも連れてきてくれるなんて…。
色々なことが引っかかって、それはさすがに断ろうと思った。するとラルフさんは首を横に振って、「リア」と優しく言った。
「大丈夫。俺やエバンがいなくともこの国を守ってくれる騎士は大勢いる。俺はただの隠居老人だから。」
「それにあなた、久しぶりにお出かけしたいのよね。」
ニコニコ笑ったレイラさんが楽しそうに言った。
するとラルフさんはレイラさんを見て少し照れたように笑った後、「ああ」と言った。
「ああ。リオレッドに最後に行ったのなんてずいぶん前だからな…。」
確かに思い返せないくらい、ラルフさんはリオレッドに行っていない気がする。それにもしかしてこれは逆に、エバンさんを早くテムライムに帰すためって意味もあるかもしれない。
「それでは美味しい
観念した私は「ありがとうございます」と言った後、そう付け足した。するとラルフさんは本当にうれしそうな顔で笑った後、「楽しみだ」と言った。
「ママ、頑張ってきて!」
「ルナのことは僕たちに任せて!」
お見送りをしてくれたカイとケンが、すごくたくましく言ってくれた。本当にこの子たちも大きくなった。いつも留守にしてごめんねって気持ちも込めて、力強くハグをした。
「ありがとね。よろしく頼みます。」
「うんっ!」
「ママも気を付けて!」
もし大丈夫そうならすぐにでもこの子たちをリオレッドに呼んで、今の状況をちゃんと見せなくてはと思った。内戦の後の状況なんて見せたら怖がるかなって思っていたけど、見せる事できっと、"こういうことは起こしてはいけない"って学んでくれると思う。そう思えるほどに、この子たちは立派に成長してくれた。
「ルナ、にぃにと寝たくな~い。ばぁばかティーナにする。」
「こら。」
優しくしてくれるおかげでルナはわがままで自由奔放に育ってしまっているけど、もしかしたらそれは私に似てしまったせいかもしれない。
「じぃじやばぁば、にぃにの言う事よく聞くんだよ。」
「わかってるってば~。ママ早く行っておいで。」
「はいはい。」
どうやら私に似たのは自由なところだけじゃなくて、ちょっと女の子なのに強すぎるところもらしい。思い返せばルナに"行かないで"って言われたことって一度もないなって思うと、少しだけ寂しい。
「それでは、行って参ります!」
「うん。またリオレッドで。」
ラルフさんのお見送りの言葉は、まるで"リオレッドは大丈夫だからすぐ行くよ"って言っている言葉みたいに聞こえた。きっとラルフさんの言う通りだ。私は大きくそれにうなずいて、「はい」と自信を持って返事をした。
「早かったっすね、行きましょうか!」
「うん。お願い。」
それからすぐにさっきの海岸へ戻ると、ジェイドさんがスタンバイをして待っていてくれた。私はエバンさんの部下数人と一緒に船に乗り込んで、それを確認したジェイドさんはすぐに船を出発させた。
「レルディアに近づくと他の船の邪魔になりますから、少し離れた場所に停泊する予定っす。そこで兄貴と旦那が待機してるってことなんで。」
「了解です。」
エバンさんは現状、どこまでの状況を把握できているだろうか。まだ到着して1日しか経っていないわけだしそんなに多くの情報は得られてないかもしれないけど、せめてみんなの安否くらいは…。
「お嬢。」
「ん?」
いてもたってもいられなくて、船の先頭に立ってリオレッドの方向を見つめている私を、ジェイドさんが呼んだ。なんだろうと思って振り返ると、彼はいたずらそうに笑っていた。
「また面白い話しましょうか?」
「あなたが捕まってもいいのなら。」
私の返答を聞いて、ジェイドさんは「きっびし~~」と言って頭を抱えた。でも多分これも私をリラックスさせようとして言ってくれたことは分かっていたから、もうそれ以上追及するのをやめてあげることにした。
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