第37話 視察へレッツゴー!
「行こうか。」
「うんっ!」
ワシライカとカワフルの人たちが力を合わせて居住区を作ったらすぐに生活できる環境が整ったらしく、改めて彼らの能力の高さを痛感した。そしてその後すぐ難民第一号の人たちがテムライムに到着して、実際にその場所での生活を始めた。
今日はそこに連れて行ってもらえることになっている。
私は故郷の人たちにテムライムで会える不思議さと難民キャンプが見られるということで、昨日からワクワクし始めていた。
「あれ?またママに羽が生えてるわね。」
「え~?!うそだ~?!」
準備をしている私をみて、レイラさんが嬉しそうに言った。私も嬉しくなって思わず笑ったけど、カイとケンはやっぱり不服そうな顔をして私の背中を触っていた。
「よ~しっ!皆行くぞ~!」
「「は~い!」」
危険なところにいくわけでもないから、今日はみんなで視察に出かけることになっている。元気に返事をしてくれる子どもたちの背中を押しながら、私達はみんな仲良くウマにのって元気に家を出発した。
「さ、もうすぐだよ~!」
「ママぁ。ルナ、お尻痛い~。」
「やった~~~~!もうすぐだ~~~~!」
数時間ウマを走らせた頃、先頭を走っていたエバンさんが大声で言った。
それに合わせてみんな口々好きなことを言っていたけど、顔はどこか楽しそうだったから、やっぱりみんな私の子だなって思った。
エバンさんがもうすぐと言ってくれてからしばらく経った頃、森の中に大きな木の門みたいなものが立っているのが見えた。門の上の方であたりを監視していたらしい人は私達の姿を目でとらえた後、すぐにその門を開けてくれた。
「うわぁ~!」
「おっきい!」
「ね!大きいね!」
「リアも子供みたい。」
私はカイとケンと同じような反応をしながら、その門をくぐった。門の先は木が切りそろえられてしっかりと"道"が出来ていて、その道の向こう側には広場のような場所が見えた。
「お待ちしておりました。」
「ああ。今日はありがとう。」
すると難民キャンプに常駐してくれている団員さんが、ウマを置いておく場所へと誘導してくれた。私はそれに従って彼についていきながら、周りをキョロキョロと眺め続けた。
「こちらです。」
ウマを降りて、まっすぐと伸びている道を進んで広場へと入った。すると広場にはリオレッドでカルカロフ家が滞在していたところにあったツリーハウスのような建物といくつかの井戸、そして畑みたいな場所とかキッチンみたいな場所がたくさん設置されていた。
「す、すごすぎる…。」
「ね。」
そこはちゃんと、"街"だった。
簡易的に作ったから長くは持たないとワシライカとカワフルの人たちは言っていたみたいだけど、私の目からしたらそんなことが分からないくらい、ちゃんと"街"みたいになっていた。
「これを、短期間で…。」
「うん。」
こんな場所を短期間で、しかもいくつか作ったなんて、私には本当に信じられないことだった。ひたすら驚いて足を止めている私をエバンさんはクスクス笑っていたけど、もはやそんなことは気にならないくらい、私は感動していた。
「リア、ちゃん…?」
「リアちゃんじゃないですか…?!」
するとそこにいたリオレッドの人たちが、私の姿を見て口々とそう言った。
リオレッドでもパパが大臣になったことで私の地位も上がったわけだけど、小さなころからそう呼ばれていたせいか、"リアちゃん"という呼び方がリオレッドでは定着している。
「みなさん、ようこそテムライムへ。」
親しみを込めて呼んでくれる人たちが、私の大好きなテムライムにたくさんいる。大変な状況の中生きてここにいてくれることが嬉しくなって、私は大げさに礼をしながら言った。
「リアちゃん…っ!本当にありがとう!」
「リアちゃんが色々してくれたんだって信じてました。」
そんな私のところにみんな寄ってきてくれて、泣きそうな顔で言ってくれた。私もそれにもらい泣きしそうになりながら、首を大きく横に振った。
「違うです。私ではなく、今回色々してくれたのは王様です。」
今回難民を受け入れると言い始めたのは、まぎれもなく王様だ。だから私に感謝されることなんて、何もない。
「でもよかった。本当に。本当に良かったです。」
そんなことよりも、何より生きててくれてよかった。ここまで無事に道が出来ていたみたいで、本当に良かった。私は泣き始めているおばあさんの手を握って、自分も同じように泣いた。
その暖かい涙はどんどん周りに伝染して行って、私達はしばらくまとまって周りを気にすることもなく、シクシクと泣き続けた。
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